2011-04-14

魔女の宅急便 6 それぞれの旅立ち (角野 栄子)

「魔女の宅急便」シリーズの 6 作目にして完結編です。13 歳で魔女として一人立ちしたキキは、お母さんになりました。

魔女の宅急便 〈その6〉それぞれの旅立ち (福音館創作童話シリーズ)
角野 栄子 佐竹 美保

4834024660
福音館書店 2009-10-07
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前作で、キキととんぼさんは結婚しました。とんぼさん 23 歳、キキ 22 歳のことです。本作はそれから 13 年後、つまりキキ 35 歳の物語です。キキは双子を産みました。女の子のニニと、男の子のトトです。本作の主人公は、ニニとトトの二人です。

本作は最終巻ということもあって、「魔女の宅急便」で特にキキと親しかった人達が再登場します。2 巻以来、ずっとキキのお友達だったモリさん。そのモリさんの弟ヤアくんと、おソノさんの娘のノノちゃんが十八年の恋を実らせて結婚します (4 歳の時に結婚を決めた、おませな二人!!)。結婚式にはキキの両親のコキリさんとオキノさんも参加しました。コキリさんは、「キキの恋」で重い病いにかかってしまいましたが、本作で元気な顔が見れて嬉しかったです。

それから、砂漠の町へ行っていたヨモギさんが帰ってきました。ヨモギさんとキキは、町はずれのヨモギさんの家で静かにお話しをしながら、ジュースを飲むのが楽しみでした。しかし、その家にはもう一人男の人が居たのです。ヨモギさんの息子さんです。彼は絵描きさんで、ヨモギさんとキキが話す姿を絵にして、世を去ります。息子が亡くなると、ヨモギさんは砂漠の町へと去ってしまうのでした。そのヨモギさんが十数年振りにコリコの町へと帰ってきたのです。ヨモギさんのエピソードは、楽しいお話・失敗するお話の多い「魔女の宅急便」の中で、哀しくて爽やかで明るい魔法の様なお話なので好きです。

最後に、一番重要なキャラクターを紹介しましょう。「キキともうひとりの魔女」でキキの生活に入り込んできたケケです。ケケも大人になって、キキの子トトと文通をしています。ケケはお手紙の中でしか登場せず、本作に姿は見せないのですが、手紙だけでも存在感十分です。あの人の心をかきみだしていたケケが、人の心を察する大人に成長しているなんて! でも、ケケらしさはなくなっていないんです。私は本作で、ケケが好きになりました。

ニニとトト

女の子のニニは魔女の素質があるのに、十歳を過ぎても魔女になるとは言いません。それに小さい頃のキキの様に、自分勝手で「魔女なんて!」って思っています。そんなニニにキキも振り回されます。でも、ニニはやっぱりキキの子。なんだかんだいっても、最後の最後はキキと同じ強い芯を持っているのです。そんなニニの旅立ちを描くのが本作です。一作目のキキを思い出しながら、きっとニニなら大丈夫って思いました。

一方、トトは男の子なので魔女になれません。でも、魔女の素質は持っているようです。だからこそ悩みます。魔女の素質が全くなかったら、話はもった単純だったんでしょうけどね。でも、ちゃんとした魔女にはなれないようです。それがケケとの文通に繋がるんですね。ケケもトトのことを彼女なりに支えます。トトの物語は、どうなるのか先が読めないので、読んでいてドキドキしました。マーガレット・マーヒーの名作「めざめれば魔女」では、男の子の「魔女 (witch)」も出てくるので、トトが魔女になっても良いと思うのですけどね。

ニニは魔女として旅立ちますが、トトは自分探しに旅立つ感じです。

めざめれば魔女
めざめれば魔女

あとがき

ついに「魔女の宅急便」も全 6 巻が完結しました。一作目刊行から、なんと 24 年経っているそうです。色んなエピソードがありましたが、「もちつ、もたれつ」な心が一番に感じたシリーズでした。

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