ジュール・ヴェルヌの「地軸変更計画」(原題: Sans dessus dessous; 上もなく下もなく) を読みました。
地軸変更計画 (創元SF文庫)
ジュール・ヴェルヌ 榊原 晃三
東京創元社 2005-09-10
Amazonで詳しく見る by G-Tools
ヴェルヌ・ファンとして、「地軸変更計画」という作品があることすら知らなかったことを恥ずかしく思います。
この作品は、「地球から月へ」「月世界へ行く」に出てくる大砲クラブものの第三作です。前作に引き続いて、大砲クラブ会長・バービンゲン、同書記・マストン、同会員・ニコル大尉が登場します。しかし、本作と前作の間には大きな時間の隔たりがあります。
- 1865 刊行: 地球から月へ
- 1870 刊行: 月世界へ行く
- 1889 刊行: 地軸変更計画
約 20 年の開きです。後期のヴェルヌの作品は、どうも暗い話が多いです。本作にしてみてもそう。邦題にある通り、大砲クラブが地軸の変更を試みるわけですが、もし成功してしまうと日本や中国が海に沈み、ニューヨークは高地になってしまうと云うのです。しかし、大砲クラブは意にも介しません。ここに到って、大砲クラブは完全な悪役です。
「地球から月へ」「月世界へ行く」で人類の夢を代弁してきた大砲クラブなだけに、悪役に転じてしまう姿は読んでいて悲しくあります。
地軸変更のアイデアは、ヴェルヌ作品の中でも特にピカ一で、スケールも特大。オチの付け方も見事。惜しむらくは、大砲クラブをはじめとする登場人物のほりさげが小さかった点でしょうか。夢のあるヴェルヌ作品の方が、私は好きですかね。
前作について
「地球から月へ」(De La Terre a la lune: Trajet diredt en 97 heures) は「月世界旅行」という邦題でちくま文庫から、「月世界へ行く」(Autour De La Lune; 月世界をめぐって) は創元 SF 文庫から出版されています。
0 件のコメント:
コメントを投稿