2011-04-04

新編 名曲名盤300 (ONTOMO MOOK)

レコード芸術でほぼ五年に一度おこなわれる企画「名曲名盤 300」の最新総集編が 2011 年 3 月に発売されました。今回の「名曲名盤」は 2009 年の 5, 7, 11 月号および 2010 年の 5, 7, 9 月号の 6 回に渡って特集されたものに、最新情報を加味したものだそうです。

高校時代、私にはクラシック音楽の師匠 (?) が 2 人おりました。そのうちの一人が「レコード芸術は買わない。買うと CD が欲しくなるから。物欲に負けるから」。当時、その気持ちを推し量ることは出来ませんでしたが、大学生も終わりに近づくとその心が分かる様になりました。師の言う通り、レコード芸術にはつい CD を買わせてしまう魔力の様なものがあるのです。自然と私もレコード芸術を買わなくなりました (自分の財布を守るために!!)。

そういう次第で、私はレコード芸術に掲載された特集を読んでいません。ただ、この特集は参考になることが多いのでムックになったのを買ったわけです。

内容と感想

10 人のクラシック音楽批評家が 1 曲につきベスト 3 を選出し、順位に応じて点数を付加。その合計をもって各曲の順位付けをします。各曲の「ベスト 3」については小さなコメントを付記。また各曲に対して「講評」が入ります (講評は評論家 5 人による分担執筆)。

この「名曲名盤300」シリーズは昔から定盤が上位を占める傾向があります。また、録音の古い CD を積極的に排する傾向も強いです。そして、ほとんどの曲は上位の「名盤」が変わりません。初心者向けの名盤推薦書と言って良いでしょう。

私の読み方はこうです。まず、好きな曲の「ベスト 3」はなるべくチェックします。次に、自分の愛聴盤を推している批評家がいれば、その人の推薦盤をチェックします。それから講評を読みます。今回の講評は、選外の CD を言及することがあります。これは「定番」以外の CD を知ることができるので嬉しいです。褒め方にもよりますが、好みに合いそうなら、その CD もチェックします。最後に、本書の内容はあくまで一資料と割り切り、全面的に信用しないようにします (本当の「名盤」は人によって異なるからです。貴方の名盤は貴方が見つけるしかありません)。購入する前は、AmazonHMV のレビューも参考にします。あとはお財布との相談です。

本書の不満点も 3 つ挙げておきます。

一点目は講評が「ベスト 3」と過去の「名曲名盤300」からの変化に重きが置かれていること。そのため、総合点数の低い CD に対するコメントがほとんど見られません。「ベスト 3」以外の CD についての情報が少なすぎます。もう少しコメントが欲しいところです。

二点目は変わらない「No.1」について。曲によって、不動の名盤があります。カザルスのバッハ・無伴奏チェロ組曲ブレインのモーツァルト・ホルン協奏曲フルトヴェングラーのベートーヴェン・交響曲第9番ポリーニのショパン・練習曲等々。過去の名曲名盤で常に首位にある CD です。こういうのは、別格扱いにして予め「ベスト 3」ではなく「ベスト 4」まで選出してもらうとか工夫をして欲しいです。

三点目は選曲の偏りについて。ベスト 300 には、主にバッハ以降の作曲家が名前を連ねています (例外はモンテヴェルディ、ヴィヴァルディ、ヘンデルの三人)。最初の企画の頃はこの選曲で良かったでしょう。しかし、今はバロック以前の CD もたくさん出ています。有名な作曲名を少し挙げてみます: ビクトリア、クープラン、シャンパルティエ、ビーバー、コレッリ、パッヘルベル、ロカテッリ、アルビノーニ、テレマン、スカルラッティ、ペルゴレージ。そろそろ「バッハ以前の名曲300」と「バッハより後の名曲300」みたいな感じに選曲を増やしても良いのではないかと思います。

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