2012-09-29

10/1 の映画の日は台風大丈夫?

10/1。映画の日。マルドゥック・スクランブル 排気を観に行こうと思っています。心配なのは台風 17 号。気象庁で調べてみました。

10/1 の朝には関東圏を抜けていそうです。北海道の方とか申し訳ないですが、ちょっと映画。楽しみ。

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2012-09-28

Classic Masterworks の不良品交換メール、HMV より届く

Classical Masterworks という 30 枚組のクラシック CD ボックスがあります。

Classical Masterworks
Amazon で買う | HMV で買う

この 25 枚目、スメタナの「わが祖国」の 1 曲目 0:04 及び 1:42 付近に (電子音みたいな) 大きなノイズが入っています。普通に CD をかけてて、スピーカーが壊れるかと思ったほどびっくりしました。

この度、HMV からメールがあって不良品交換の手続き方法を教えてもらいました。HMV でこのボックスを買った人は、メール・ボックスをチェックしてみましょう。もし届いていなかったら、スパムと間違えられていないかチェックすることを忘れずに。受付締切日は 2012 年 12 月末日とのこと。お早めに。

Classical Masterworks について

せっかくなので、この 30 枚組ボックスについて紹介しておきましょう。このボックスは、アルテ・ノヴァ・レーベルの CD を中心に (一部 RCA 音源) クラシックのメジャー曲を集めたものです。アルテ・ノヴァというレーベルは、大手レーベル (ドイツ・グラモフォンやデッカ、EMI など) に所属しないながらも実力のあるアーティストと契約して、メジャーな曲からマイナーな曲まで手広く録音していました。

デイヴィッド・ジンマンによるベートーヴェンの交響曲全集はアルテ・ノヴァを代表するベスト・セラーになりました (本ボックスでもベートーヴェンの第九とリヒャルト・シュトラウスを一枚収録)。ロス・ポープルは古楽器的な演奏をモダン・オーケストラでやりながらも奇をてらわない演奏がぼくの心を引き付ける指揮者です (ヘンデルの水上の音楽と合奏協奏曲 Op.3-3、ハイドンの交響曲第 93,94,95 番、メンデルスゾーンの交響曲第 1,4 番、オルフのカルミナ・ブラーナ、サン=サーンスの動物の謝肉祭と七重奏曲 Op.65 を収録)。エミール・クライン指揮ハンブルク・ソロイスツによるヴィヴァルディの四季は広がりのあるゆったりとした演奏で (この曲では定番の) イ・ムジチの演奏のよう!!

HMV のレビューでは、次の様に書く人もいます。

リーパーはグレツキ以外殆ど手元にないので、これは纏まって購える最後のチャンスかもしれないので、買うとしよう。

クラシカル・マスターワークス(30CD)|HMV ONLINE より引用

リーパーの CD はベルリオーズの幻想交響曲、ドヴォルザークの交響曲第 9 番「新世界より」とスラヴ舞曲 Op.72 No.5-8、マーラーの交響曲第 1 番「巨人」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第 2 組曲にスペイン狂詩曲とボレロ、シベリウスのヴァイオリン協奏曲に交響曲第 5 番、ワーグナーの管弦楽曲集が収録されています。

もちろん、全ての演奏が良いわけじゃありません。でも、玉石混淆の中では良い方です。あと、アルテ・ノヴァ・レーベルが好きならコレは買いじゃないかな、と思います。

2012-09-25

吸血鬼ドラキュラが生まれる前の吸血鬼小説たち

先日、スティーブン・キングの「呪われた町」を読みました。1975 年に出版されたキングの長編第二作。現代に吸血鬼が現れたら、というストーリーを上手くホラー小説にまとめ上げた一品です。吸血鬼を殺すには心臓に杭を打つ、吸血鬼は招かれないと家の中に入れない、十字架は有効だが信仰がないと力が発揮されない... と吸血鬼の「規則」に則った上で現代風なアレンジが利いています。

呪われた町 (上) (集英社文庫) 呪われた町 (下) (集英社文庫)

さて吸血鬼といえばドラキュラ。ドラキュラ以前・以後にも吸血鬼をあつかった小説は多いです。ドラキュラ以後の作品は「呪われた町」を含め沢山あるので脇に置いておいて、興味があるのはドラキュラ以前の作品。ところが Wikipedia吸血鬼を題材にした作品の一覧には小説の出版年がありません。

この「呪われた町」集英社文庫・新装版の解説はドラキュラ以前の吸血鬼の小説が詳しい。これは! と思ったので、メモ代わりにまとめてみます。

なお、吸血鬼の小説については下記ウェブページも詳しかったので、併せて参考にしました。

「吸血鬼ドラキュラ」以前

最初の吸血鬼小説はジョン・ポリドリの短編です。ポリドリは詩人のバイロン卿の主治医兼友人だったとのこと。1816 年 5 月、ポリドリとバイロンはスイスのレマン湖畔にある別荘ディオダティ館に滞在していました。そこに詩人のパーシー・シェリーとその愛人メアリー (後に結婚してメアリー・シェリーとなる) がやって来ます。ここからは解説をそのまま引用します。

暇つぶしにそれぞれ怖い話を書こうという話になり、この競作ゲームから、二つの歴史的な名作が誕生した。一方がメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』、他方がポリドリの「吸血鬼」。世界三大モンスターのうち二つが、ディオダティ館の一夜をきっかけに文学の世界で花開いた

ポリドリの「吸血鬼」はそれほど出来が良かったわけではなかったらしく、そのまま消え去ります。私も未読です。Amazon で「ポリドリ」で検索すると「ドラキュラ ドラキュラ―吸血鬼小説集」という本がヒットします。レビューを読むと、本書にポリドリ作の「吸血鬼」が収録されているとのこと。

一方、メアリー・シェリーのフランケンシュタインは今でも読まれる名作になりました。

フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

プレストの吸血鬼ヴァーニーについては情報が少なく未読です。先述のウェブページに説明があったので引用します。

この作品は868ページという大作だが、著者は明らかでなく、『ペニー・ドレットフル』なる三流週刊誌に複数の著者によって連載されていたもので、主人公ヴァーニー卿の描写にはルスヴン卿からの借用が多いと言われている。

この作品は売れたことは間違いないが完全な読み捨ての消耗品で、現在ではほとんど入手不可能となっており、そのかぎりで「幻の傑作」といわれるが、読書界での評価は当初から極めて低く、「ルスヴン卿」と同じく現在では吸血鬼小説の系譜の中で語られるだけの存在となっている。

吸血鬼小説の系譜 より引用

ルスヴン卿はポリドリの吸血鬼に出てきた登場人物です。868 ページという大作ながら「読み捨ての消耗品」と言われると、読むにも覚悟が要りますね。日本語訳はあるのかしらん?

ヴァーニーに続いて、1872 年に「吸血鬼カーミラ」が登場します。カーミラは女性です。女吸血鬼ですね。中編ですが、間伸びすることなくカーミラに狙われた女性が次第に衰弱する姿はなかなか読みごたえがあります。作者のレ・ファニュは幻想小説を得意にしていた作家で、このカーミラが代表作とされています。

吸血鬼カーミラ (創元推理文庫 506-1)

そして、1897 年にブラム・ストーカーによる「吸血鬼ドラキュラ」が登場します。吸血鬼 (ヴァンパイア) の代名詞ドラキュラ伯爵。吸血鬼退治のヴァン・ヘルシング博士。ドラキュラ伯爵を追い詰めるミナ・ハーカーといった吸血鬼物では代表的面々が本作で登場しました。

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)

ヘルシング教授は「ドラキュラ」で名を馳せて様々な作品に登場する様になります。「呪われた町」でもこんな一文が...

彼らは揃って病室を出た。廊下で、ベンがジミーの顔を見ながらいった。「マットを見てだれかを連想したかい?」

「ああ」と、ジミーが答えた。「ヴァン・ヘルシング教授を連想したよ」

呪われた町 (下) p.202 より引用

ハリウッドでは「ヴァン・ヘルシング」という映画も作られました。ヘルシング役はヒュー・ジャックマンでした。

ヴァン・ヘルシング [Blu-ray]

ミナ・ハーカーはアメコミ「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」の主要登場人物となり、そのアメコミは「リーグ・オブ・レジェンド」という題名で映画化されました。原作では吸血鬼にならなかったミナが、映画では吸血鬼になっている不思議はありましたが...

リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い [Blu-ray]

ドラキュラの作者ブラム・ストーカーは、その功績からホラー小説・ダークファンタジー小説にアメリカのホラー作家協会が贈る文学賞の名前にもなっています (see ブラム・ストーカー賞)。

「呪われた町」に関連して

最後に、「呪われた町」の様に現代に現れた吸血鬼を描いた作品を紹介します。「十二国記」で有名な小野不由美が「呪われた町」に触発されて書いた作品として「屍鬼」。文庫版で全五巻という大長編。未読ですが、すごく有名なので読んでみたいところ。

屍鬼〈1〉 (新潮文庫) 屍鬼〈2〉 (新潮文庫) 屍鬼〈3〉 (新潮文庫) 屍鬼〈4〉 (新潮文庫) 屍鬼〈5〉 (新潮文庫)

映画では「フライトナイト」が好きです。1985 年と 2011 年に映画化されています。1985 年版では、吸血鬼を信じていなかったピーター・ヴィンセント (似非ヴァンパイア・ハンター) がお気に入りの手鏡で自分を見つめていたら、後ろを通った吸血鬼の姿が映らなくて正体に気付くオチ。良く出来ていました。2011 年版はバトルシーンが多くなっていますが、ピーター・ヴィンセントが少年時代に両親を吸血鬼に殺されていた過去を入れたり、1985 年版では主人公チャーリーに理解を示さなかった母親との関係が良い方向に修正されていたりと、細かな手直しが入っていて映画を面白くしています。笑ったのは銀の銃弾で撃たれて「銀の銃弾は狼男用だ」と吸血鬼が言い放つシーン。細かい所まで吸血鬼のルールを守っている良作です。

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2012-09-09

プロメテウス 感想 ネタバレあり

映画「プロメテウス」を観てきました。

以下、ネタバレを含む感想です。

ストーリー

オープニング。去りゆく宇宙船。白い巨人が黒い液体を摂取。直後、体が崩壊して滝にのまれる。2080 年代、考古学者エリザベス・ショウとチャーリー・ホロウェイは過去の遺跡に星図を発見。ショウらは壁画に描かれた巨人をエンジニアと命名。

2093 年、衛星 LV-223 に到着。人工的な直接を発見して着陸。ホロウェイは調査チームを率いて人工構造物に乗り込む。しかし、人影はなくエンジニアの死体だけが残っていた。失意のホロウェイ。アンドロイドのデイヴィッドは「黒い液体」を採取。生物学者と地質学者が別行動に出る。嵐の到来を機に船へ戻る。別行動の 2 人は置いてきぼり。

デイヴィッド、黒い液体をワインに混入してホロウェイに飲ませる。ホロウェイとショウ、セックス。

翌日、迷子の 2 人を探しに再探検。生物学者の死体を発見。デイヴィッドはエンジニアの操縦室を発見。一人のエンジニア(白い巨人)が冷凍休眠されているのを見つける。ホロウェイの容体が悪化。船へ戻るも、リーダーのヴィッカーズによりホロウェイは焼き殺される。ショウ気絶。目が覚めると、デイヴィッドから妊娠三か月と告げられる。ショウは自動手術機で体内の異物を摘出。それはイカ型の生物だった。生物を手術機の中に残して、ショウは逃げる。その先で、計画のオーナーであるウェイランドと出会う。同時刻、地質学者が戻り暴走。メンバーを殺害。船長により焼き殺される。

船長はショウに、ここはエンジニアの本星ではなく生物兵器の試験場ではないか? と疑問を打ち明ける。

ショウはウェイランド、デイヴィッドとともに冷凍休眠されたエンジニアの目を覚ましに行く。目覚めたエンジニアと対話しようとしたとたん、デイヴィッドは首をもがれ、ウェイランドは殺害される。ショウは逃走。エンジニアは構造物内の宇宙船を起動して宇宙へ飛び立とうとする。船長は船を特攻させ、宇宙船を墜落させる。ヴィッカーズは専用モジュールを切り離して脱出。モジュールから出たところ、倒れてきた宇宙船の下敷きとなる。

ショウはモジュールに入り酸素を補給。壊れた宇宙船から追ってきたエンジニアが迫る。ショウは手術室を開放して、イカ型生物とエンジニアを闘わせ、その隙に逃げる。その後デイヴィッドを回収、別の宇宙船でエンジニアの母星を目指す。

エンジニアの胸から、エイリアンが現れる。

全体的に良いストーリーだったと思います。謎は謎のまま残したストーリー展開は、次作への繋ぎになっていました。しかし、いくつか不自然な行動と謎が目立ち、映画を楽しむことができませんでした。

以下、謎と自分なりの考えです。

オープニングの白い巨人はなに?

いつ? どこ? 分かりません。そして彼の行動の意味... 不明です。

彼は反逆者で宇宙船から追放されたのでしょうか? それで、自殺用に黒い液体を渡されたのでしょうか? もしかしたら、地球へ黒い液体をまくことに反対したのかもしれません。

宇宙船のシルエットが、LV-223 にあった宇宙船と違うのも気になります。船の種類が違うのでしょうか? (巡洋艦と空母のように) 船の建造時期が違うのでしょうか? それとも文化が違うのでしょうか? (エンジニアの星が単一文化とは誰も言ってませんしね)

オープニングから謎だらけですが、この「謎」については本編で一つも触れません。続編への伏線?

何故、星座は LV-223 を指した?

ショウとホロウェイによって発見された星座から、(おそらく) 他の研究者たちによる研究を経て、星座の指す先が LV-223 だと判明しました。しかし、そこはエンジニアの生物兵器実験の星でした。何故、エンジニアは LV-223 を星座に残したのでしょう? 当時の人類には恒星間飛行技術もないのに。

少し、時代について考えてみます。ショウとホロウェイが見つけた最古の星座は 3 万 5 千年前のものです。これは「最古」であって、もっと新しい星座もあります。映画の中ではエジプト、メソポタミア etc. の古代遺跡の中で同様の星座が発見されたと言っています。古代エジプトは紀元前 3,000 年頃、古代メソポタミア最初の文明であるシュメール文明は紀元前 9,000 年頃の時代です。3 万 5 代年という数字がピックアップされていますが、少くともエンジニアは 4,000 年前の人類と会っていたことが類推できます。しかし、1,000 年には生物兵器の実験に使われていたことも間違いなさそうです (千年前とするのは、ショウの時代 2093 年から数えて二千年前にエンジニアが死んでいたため)。

35,000 年から 4000 年前まで、ずっと同じ星を指していたのは何故か? 生物兵器開発の星だったという理由は弱いように思います。4000 年前から 1000 年前の間にエンジニアの間で何かがあったのでしょうか? 例えば、本々 LV-223 がエンジニアの本星で途中移住することになったとか、元は LV-223 はエンジニアの星系の中でもハブ的な重要拠点な星だったとか、異星人とのファースト・コンタクト用の星だったとか。そして、何かがあって星の目的が変わってしまったとか。

単純に LV-223 が「最初から生物兵器開発用の星」だったと断ずるには証拠不十分。この謎は解かれるのでしょうか?

構造物前の人工的直線はなに?

エンジニアの宇宙船を見ても、非常に技術が高いことが分かります。エンジニアの船は滑走路が要りません

構造物の前にあった人工的な直線は何なのでしょう? 資材運搬用の道? う〜ん、分かりません。

そんなに急いでどうする?

宇宙船プロメテウスが人工構造物の前に着陸して、ホロウェイはすぐに調査開始を進言します。船は長旅を終えたばかり。船にも人にも休憩を与えたいところ。しかも日没まで 6 時間を切っています。

後に自動飛行して構造物内をマッピングするガジェットが登場します。

異星の未知の構造物を前に、地図もなしで調査しようとは...

ウェイランド氏も一日や一週間、冷凍睡眠に入っていても良いはず。そんなに時間が押しているわけでもないのに。性急過ぎやしませんか? 時間をかけて準備をしても、映画のシナリオ的には問題がないはず。むしろ、調査隊らしさが強く出ると思うのですが... むしろ、本当に学者か? と思うほどの素人っぽさを見せつけてくれます。うかれすぎです。

何故、ヘルメットを脱ぐ?

構造物に入って、構造物内がテラフォーミングされていることが分かります。そしてヘルメットを脱ぐホロウェイ。残るメンバーもヘルメットを脱ぎます。

ちょっと待って下さい。地球であっても洞窟の探険にはヘルメットは必須。それを、異星の未知の構造物の中で、何やっているんですか? 物が落ちてきたらどうします? 空気に致死性のウィルスがいたらどうします? 天丼から落ちてくる水滴が安全だと保証できますか? 誰か止めようよ。

チームワークを乱してどうする?

地質学者が怒って、生物学者を巻き込みチームから離散します。そして迷子になります。きれいなまでの死亡フラグです。

このチームって、ウェイランド社が選んだ研究者選抜チームなのですよね? 科学者は自分勝手な点が多いのは認めます。しかし、地球から遠く離れた星での研究生活。それなりにストレスもかかります。当然、チーム選定に当たってストレス・テストもしたことでしょう。なのに何故、いきなり不満爆発なのですか? 地質学者にとって「構造物」に興味がないのは分かりますが、日を置けば構造物周辺の地質を研究することにもなったでしょう。どんな契約内容で地質学者と結んだのか興味津々です。

LV-233 到着時の会議で初めて異星人の存在を明かす程の秘密プロジェクトでしたから、もしかして、地球出発の際は未知の星の地質研究と言われていたのかもしれませんね。対異星人用の研究者メンバーばかり選ぶと、周りにバレるかもしれないので、本来の目的を隠蔽をするために「必要ない」地質学者等もメンバーに加えたのかも。そして、自分は単なる「飾り」であったことに気づいて地質学者は怒ったのかな?

でも、怒るにしてもその矛先はショウ達ではなく (船に残ってる) ヴィッカーズに言うべきだと思いますよ。初めての場所で単独行動は... ほら、ね。

何故、エンジニアは全滅した?

「黒い液体」が致死的な兵器であることは映画を観ていれば分かります。当然、研究していたエンジニア達も気をつけていたことでしょう。それなのに何故、全員死んでしまったのか?

ここで、「黒い液体」の効果について見てみます。「黒い液体」を摂取した人物は DNA を破壊されて死亡。死亡前に女性と性交すると、女性を母体にフェイスハガーが短期間で誕生・成長。フェイスハガーが他の生物に卵を産みつける。生物内で卵は孵化、エイリアンとなって宿主の体を喰いやぶる。

随分と手順がかかっていますね。まるで、よく出来た暗殺兵器です。しかし、「黒い液体」を入れた容器が大量にあったことから、エイリアンの誕生はあり得ません。なぜなら、「黒い液体」を本来の用途として大量散布した場合、フェイスハガーが生まれる前に人が全滅するからです。なので、フェイスハガー及びエイリアンの誕生はエンジニアも予想していなかった副産物ではないかと思うのです。

二千年前のこの星で、もしかしたらショウとホロウェイに起こったことと同じ事件があったのかもしれません。不用意に「黒い液体」に感染し、同じ様な流れを経てエイリアンが誕生。エイリアン対策など頭になかった化学・生物系研究者のエンジニアはあえなく全滅。エンジニアが全滅した後のエイリアンは...? もしかしたら、蛇の様な姿になって二千年を生きていたのかもしれません。

蛇足ながら、映画「エイリアン」では卵からいきなりフェイスハガーが生まれています。「プロメテウス」の様に「黒い液体」「性交渉」の 2 プロセスがカットされて、「進化」のほどを感じます。エンジニアが事件後に「黒い液体」を改良したのか? エイリアン自身が進化したのか? 興味深い謎です。

エンジニアと人間の DNA が一致した?

同じ人類の DNA を持っていても、体の大きな人・小さな人、様々です。しかし、エンジニアは明らかに人間より巨大で、膂力も桁違いです。クロマニヨン人とネアンデルタール人くらいの遺伝子的な違いはあるんじゃないかしらん。どういう判定基準で「人類」と判じたのか、気になるところです。

さて、エンジニアが人類と同じ DNA を持っていることで話が難しくなりました。今の人類の DNA は進化論で説明できるもので、大雑把に言うと地球上で DNA を持つ生物と人類の DNA の差はほとんどありません。しかしエンジニアは人と判じられています。異星人と地球生命体とで DNA がほぼ同じというのはありえないことです。この答えを考えてみます:

  1. どの様な星であっても、進化の過程で同様の DNA となる
  2. エンジニアの発祥は地球である
  3. エンジニアは、自分達の DNA をもとにして地球の原初生命体を作った

私が思いつくのはこんな所ですが、肩すかしな回答が待っていそうで恐いです。

デイヴィッドよ、人体実験はほどほどに

エンジニアが人の DNA と同じと知ったデイヴィッド。構造物内で採取した「黒い液体」をホロウェイの飲むワインに混ぜます。人体実験です! 結果、ホロウェイは死ぬわけですが... 私が気にかけているのはそういうことではありません。

未知の星の未知の液体。しかも、何かしらのトラブルが起きてエンジニア全滅となったホログラムを見た後で、「黒い液体」をいきなり人間に与えるのはいかがなものか。今回はホロウェイの死亡と、ショウのフェイスハガー受胎で事はすみました。しかし、もっと危険な結果を生む可能性もあったのです。例えば、エボラ熱の様に空気感染でかつ致死率 99% のウィルスが出来たかもしれません。そしたら、調査チーム全滅ですよ。ウェイランド氏も死にますよ。ハルクみたいになっちゃったら、デイヴィッドですら壊されますよ。

先に「エイリアンが生まれるよ」という暗黙の了解があればこその行動と言えますが、そういう物語の作り方はいかがなものか。

ヴィッカーズのホロウェイ殺害は非道?

非情なリーダー・ヴィッカーズ。死にかけのホロウェイを火炎放射器で殺害します。でも、未知の惑星で感染症らしい症状を出しているクルーに対して、リーダーのこの対応は悪くないと思います。どう考えても、宇宙船には医療用の設備はありません。せいぜい、あるのは自動手術機程度。未知の病気を持ち込まれたら、クルー全滅の危険があります。そういう意味でも、ホロウェイが構造物の中でヘルメットを脱ぐ行為は (結果的には問題なかったとはいえ)、あまりに軽率だったと思います。

ちなみに、「空気感染なら他のメンバーも感染している」とショウが言っていますが、ヴィッカーズさん、その後のメディカル・チェックはしませんでしたね。ちょっと片手落ちな感じ。

自動手術機は何故男性専用?

地球でも数台しかないという自動手術機。体内の異物を帝王切開しようとしたショウが、リクエストを出すと「男性用です」と答えられて困ったエピソードは笑いを誘ったもの。

さて、何故、男性用の自動手術機があったのでしょう。クルーの中には女性でも重要な地位にあるヴィッカーズ、ショウがいます。あと何人か女性のクルーもいましたね。女性の手術の可能性も高いと思います。ヴィッカーズは地球でも数台 (12 台でしたっけ?) と言っていましたが、それは最新モデルの自動手術機のことでしょう。これが初代 iPhone の様に画期的な「最初」の自動手術機なら勘違いになりますが、おそらく前のモデルがあったはずです。男女共用のものが。もしかしたら、まだ男女共用の自動手術機はないのかもしれません。それなら、男性用・女性用の二機種を導入すれば良かったのではないか?

ここで思い出して欲しいのは、この自動手術機が専用モジュールの中にあったこと。専用モジュールと言えば聞こえは良いですが、脱出挺ですよね。本来ならクルー全員に平等に使える脱出挺だと思いますが、今回の宇宙船にとって VIP はウェイランド氏です。最悪に備えて、ウェイランド氏のために自動手術機を手配をした、というのが真相ではないでしょうか?

ウェイランド氏は何故一緒に来た?

地球で冷凍睡眠に入って、50 年位い待ってれば良かったのでは?

恒星間飛行はリスクが高いし、ショウ氏の仮説が正しいとは限らないし、今回の調査が成功するかどうか分からないし。不安要素はいっぱい。権力者として、地球で冷凍睡眠に入っていられない理由でもあったのかしらん。

あとがき

作り手が「謎」は「謎」のまま残そうと思った部分は、ちゃんと効果を上げていたと思います。映画「エイリアン」とのリンクもニヤリとさせられました。面白い映画でした。

ただ、細部のキズが気になる映画でもありました。不自然な行動、不可解な行動、作り手の検証不足か? と思われる設定 etc. スター・トレックのような隙のない映画を作って欲しかったです。