クラシック音楽を中心にピアノ実演をやっていた「デサフィナード」というレストランが、JASRAC に訴えられて大変なようです。
その判決文を読んで、興味深い一文があったので引用します。
なお、被告は、P4 や P5 が演奏していたのはクラシック曲 (中略) であって、管理著作物ではないと主張する。しかし、上記認定のとおり、P4 が演奏した 24 曲中、不明曲 5 曲を除いた 19 曲中 15 曲が管理著作物であり、著作権の保護期間が満了しているクラシック曲ではなかった。
判決文 pp.48-49 より引用
いくらクラシック曲であっても、保護期間が満了していない楽曲ではアウトですね (※)。しかし、保護期間が満了していないクラシック作曲家に、どういう人達がいるのかはあまり知られていません。そこで、著作権保護期間である没後 50 年が経っていない (つまり 1957 年以降に死んだ) 作曲家のリストを作ってみました。
(※) この楽曲調査があったのは平成 16 年 3 月 12 日。デサフィナードは、平成 17 年 2 月 23 日 (?) から、著作権切れクラシック曲のチェックを始めたと主張しています。
1957 年以後に没したクラシック作曲家
「没年 - 名前 (アルファベット表記, 生年) 主要作品」のフォーマットです。ただし、主要作品は @aka の独断と偏見で選びました。
- 1957-09-20 - ジャン・シベリウス (Jean Sibelius, 1865-12-08)
- 交響曲 No.1-No.7、交響詩フィンランディア、ヴァイオリン協奏曲, Op.47
- 1957-11-29 - エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト (Erich Wolfgang Korngold, 1897-05-29)
- ロビン・フッドの冒険
- 1958-08-26 - ラルフ・ヴォーン・ウィリアムズ (Ralph Vaughan Williams, 1872-10-12)
- 交響曲 No.1-No.9、グリーン・スリーブスによる幻想曲、タリスの主題による幻想曲、揚げひばり
- 1959-11-17 - エイトル・ヴィラ=ロボス (Heitor Villa-Lobos, 1887-03-05)
- ギター協奏曲、弦楽四重奏曲 No.1-No.18
- 1959-11-26 - アルバート・ウィリアム・ケテルビー (Albert William Ketelbey, 1875-08-09)
- ペルシャの市場にて
- 1960-02-09 - エルンスト・フォント・ドホナーニ (Ernst von Dohnányi, 1877-07-27)
- ハンガリア牧歌, ピアノ協奏曲 No.1,No.2
- 1962-01-29 - フリッツ・クライスラー (Fritz Kreisler, 1875-02-02)
- ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のカデンツァ、愛の喜び、愛の悲しみ、美しきロスマリン、
- 1962-02-05 - ジャック・イベール (Jacques Ibert, 1890-08-15)
- 交響組曲 寄港地
- 1963-01-30 - フランシス・プーランク (Froncis Poulenc, 1899-01-07)
- グローリア・ミサ、ピアノ協奏曲、田園コンセール
- 1963-12-28 - ポール・ヒンデミット (Paul Hindemith, 1895-11-16)
- 交響曲 画家マチス
- 1965-11-25 - マイラ・ヘス (Myra Hess, 1890-02-25)
- J. S. バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」のピアノ編曲
- 1967-03-06 - ゾルターン・コダーイ (Zoltán Kodály, 1882-12-16)
- 組曲 ハーリ・ヤーノシュ
- 1968-03-16 - マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ (Mario Castelnuovo-Tedesco, 1895-04-03)
- ギター協奏曲
- 1970-12-03 - シリル・スコット (Cyril Meir Scott, 1879-09-27)
- 蓮の国、黒人の踊り
- 1971-04-06 - イーゴル・ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky, 1882-06-17)
- 三楽章の交響曲、ペトルーシュカ、火の鳥、春の祭典、ナイチンゲールの歌
- 1972-04-03 - ファーディ・グローフェ (Ferde Grofé, 1892-03-27)
- 大峡谷 (グランド・キャニオン)、ガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」のオーケストレーション編曲
- 1974-06-22 - ダリユス・ミヨー (Darius Milhaud, 1892-09-04)
- 交響曲、フランス組曲
- 1975-05-18 - ルロイ・アンダーソン (Leroy Anderson, 1908-06-29)
- トランペット吹きの休日、そり滑り、シンコペイテッド・クロック、タイプライター、ブルー・タンゴ
- 1975-08-09 - ドミトリー・ショスタコーヴィチ (Dmitry Shostakovich, 1906-09-25)
- 交響曲 No.1-No.15、弦楽四重奏曲 No.1-No.15、ピアノ・ソナタ No.1,No.2、ピアノ五重奏曲
- 1976-12-04 - ベンジャミン・ブリテン (Benjamin Britten, 1913-11-22)
- シンプル・シンフォニー、戦争レイクエム、青少年のための管弦楽入門
- 1977-09-13 - レオポルド・ストコフスキー (Leopold Stokowski, 1882-04-18)
- J. S. Bach の「トッカータとフーガ ニ短長」の管弦楽編曲、ムソルグスキーの「展覧会の絵」の管弦楽編曲
- 1978-05-01 - アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン (Aram Il'yich Khachaturian, 1903-06-06)
- 剣の舞 (ガイーヌ)、バレエ スパルタクス
- 1981-01-23 - サミュエル・バーバー (Samuel Barber, 1910-03-09)
- 弦楽のためのアダージョ、ヴァイオリン協奏曲
- 1982-03-29 - カール・オルフ (Carl Orff, 1895-07-10)
- おお運命の女神よ (カルミナ・ブラーナ)
- 1986-07-?? - モーリス・デュリュフレ (Maurice Duruflé, 1902-01-11)
- レイクエム Op.9
- 1990-12-02 - アーロン・コープランド (Aaron Copland, 1900-11-14)
- エル・サロン・メヒコ、市民のためのファンファーレ、バレエ組曲 アパラチアの春
- 1992-04-28 - オリヴィエ・メシアン (Olivier Messiaen, 1908-12-10)
- 幼な子イエスへの 20 のまなざし、鳥のカタログ、世の終わりのための四重奏曲、トゥランガリーラ交響曲
- 1993-01-15 - ジョルジュ・シフラ (Georges Cziffra, 1921-11-05)
- リムスキー=コルサコフの「熊ん蜂の飛行」ピアノ編曲
- 1996-02-21 - モートン・グールド (Morton Gould, 1913-12-10)
- アメリカン・サリュート (ジョニーが凱旋する時の編曲)
- 1999-07-06 - ホアキン・ロドリーゴ (Joaquin Rodrigo, 1901-11-12)
- アランフェス協奏曲、ある貴紳のための幻想曲、スペイン舞曲
戦時加算について
戦時加算については、よく理解していないので、Wikipedia の解説をコピーします ^^;
第二次世界大戦における連合国(アメリカ、イギリス、カナダなど)やその国民が有する著作権であって、日本国と当該連合国との間で平和条約が発効した日の前日以前に取得された著作権に対しては、上述の通り認められる通常の著作権の保護期間に加えて、いわゆる戦時加算による保護期間の加算が認められる(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律4条)。第二次世界大戦中は、連合国や連合国民の著作権保護に、日本国は十分に取り組んでいなかったと考えられたためである。
著作権の保護期間 - Wikipedia より引用
ドイツ・イタリア (及び中国・ロシア) 以外の著作権物の保護期間を 10 年近く伸ばすというルールですね。
仮に 11 年著作権保護の期間が増えるとしたら、1946 年没の作曲家まで著作権が切れていないことになります。名前だけ挙げておきましょう。
- マヌエル・デ=ファリャ (1946-11-14 没)
- フランツ・レハール (1948-10-24)
- ハンス・プフィッツナー (1949-05-22)
- リヒャルト・シュトラウス (1949-09-08)
- クルト・ヴァイル (1950-04-03)
- アーノルト・シェーンベルク (1951-07-13)
- セリム・パルムグレン (1951-12-13)
- セルゲイ・プロコフィエフ (1953-03-05)
リヒャルト・シュトラウスはドイツ人なので、戦時加算はないかな? 戦時加算の対象になっていない国の作曲家もいるかも。例えば、パルムグレンはフィンランドの作曲家ですが、フィンランドって戦時加算対象でしたっけ? プロコフィエフはロシアの作曲家ですけど、アメリカに移住したんでしたっけ? よく分かりません! ヘルプ!!
あとがき
どうです。知っている名前が並んでいるものですね。長生きな作曲家もいてびっくりです。ロドリーゴなんて、1999 年没ですよ。
それから「トランペット吹きの休日」のように運動会で使われたり、「弦楽のためのアダージョ」のように映画 (プラトーン) で使われたりしている曲が、まだ著作権が切れていないというのは盲点ですね。
あと、編曲ものの著作権には気を付ける必要がありそうです。個人的には、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」のピアノ編曲版の著作権が切れていないのには驚きました。ピアニストの皆さん、知っていましたか?
ここには挙げていませんが、映画音楽やミュージカルの作曲家達もクラシックの曲を書いています。例えば、「ET」や「スター・ウォーズ」の作曲家で知られるジョン・ウィリアムスは 1984 年のロサンゼルス・オリンピックのために「オリンピック・ファンファーレ」という曲を書いていますし、「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「キャッツ」で有名なアンドリュー・ロイド・ウェバーは「レクイエム」を作曲しています。
著作権には気をつけて、音楽を楽しみたいものですね。
パブリックドメインの曲を編曲して著作権を得るなど、詐欺師同然ですね。
返信削除そんな事がまかり通るなら、僕だって著作権の切れた曲をどんどん編曲して大儲けできますね。
してみなよ
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