宮城谷昌光の「孟嘗君と戦国時代」を図書館から借りて読みました。ここで言う戦国時代とは日本の戦国時代ではなく、古代中国の戦国時代を指します。
孟嘗君と戦国時代 (中公新書)
宮城谷 昌光
中央公論新社 2009-05
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作者の宮城谷さんは古代中国を舞台にした歴史小説を数多く書かれている作家さんです。その宮城谷さんも、最初は春秋・戦国時代が分からなかったと言います。そこで史記と春秋左氏伝を書き写したというのですから、半端じゃありません。しかし、その過程で「史記」の中でどうしても年表に矛盾が生じることに気付いたそうです。結果、今もって戦国時代を「知る」ということは難しいというのが宮城谷さんの感想のようです (一番の理由は、始皇帝の焚書によって、多くの歴史的資料が失われたことでしょう)。
そんな戦国時代を少しでも初学者に分かり易く説明しようとしたのが本書です。本書では、戦国時代において「最大公約数になるような人物」として孟嘗君を挙げ第 7 章・第 8 章を書いています。その前の章は、彼が活躍する戦国後期の予備知識を補う形で構成されています。章題だけでも書いておきましょう:
- 第一章: 戦国時代と四君
- 第一章: 斉国と臨淄
- 第一章: 威王の時代
- 第一章: 斉の二大戦争
- 第一章: 孟嘗君の誕生と父 靖郭君
- 第一章: 稷下のにぎわい
- 第一章: 孟嘗君の活躍
- 第一章: 孟嘗君と斉国の命運
目次を見て分かる通り、太公望の国「斉」を中心に戦国時代を解説してゆきます。本書には、地図・年表といった資料もあり、それらはとても貴重です。
本書の魅力は、歴史的資料へ直接筆者自身があたって調べている点です。例えば、孟嘗君の父親・靖郭君について。史記や Wikipedia では、靖郭君は宜王の弟となっています。しかし、戦国策による記述を元にすると、靖郭君は威王 (宜王の父) の弟となる。という具合です。複数の一次資料に当たり、矛盾があることを読者に提示した上で、筆者の意見を述ベているスタイルは非常に好ましいです。
強いて欠点を挙げるとするならば、宮城谷文学の文体が使われていることでしょうか。宮城谷さんの歴史小説は、「さて」「ちなみに」「よけいなことかもしれないが」という接続詞で本筋から外れることが多いです。小説の場合、メイン・ストーリーから外れるのは、ストーリーに関連した予備知識を知らしめることが目的となっています。ところが、この文体を (厚い歴史小説ならまだしも) 薄い新書でやってしまった。初めて読む人は、少し振り回されて読むことになるかもしれません。
もっと知りたい
本書を読んで戦国時代に興味を持ったら、宮城谷さんの他の本も読んでみると良いでしょう。
戦国名臣列伝は、戦国七国の名臣を紹介した本です。孟嘗君は「孟嘗君」自身を主人公にした本です。
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