2011-03-04

孟嘗君 (宮城谷 昌光)

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宮城谷昌光の「孟嘗君」(もうしょうくん) を読みました。

孟嘗君は戦国四君の一人です。戦国四君とは、中国・戦国時代に特に活躍した人物で、斉の孟嘗君・趙の平原君・魏の信陵君・楚の春申君を指します。孟嘗君は氏名を田文と言い、斉の王族の産まれです。しかし、斉一国に留らず魏・秦・斉の宰相を務めました。才人ですね。

多くの宮城谷作品と同じく、本書「孟嘗君」も主人公が一番活躍するシーンをクライマックスに置き、それまでの艱難辛苦・成長物語をストーリーの焦点としています。ただし、本書は孟嘗君の活躍がかなり後半になっているのが特徴です。特に一・二巻目の孟嘗君は赤子で何もしていません ^^;。

一・二巻で活躍するのは戦国時代の大商人・白圭です。孟嘗君は 5 月 5 日生まれなのですが、当時の迷信として 5/5 生まれは親に仇なすと信じられていたため、父親から殺されそうになるのですね。そこをひょんな遇奇から救い出し仮親として育てるのが白圭です。この白圭。最初から商人だったわけではなく、用心棒をしては金を使うという放蕩者として登場します。そんな彼が赤子を育てつつ、商人として目覚めていく成長物語が一・二巻に当たります。はっきりいって、一・二巻は白圭の独擅場です。

一・二巻の主人公が白圭とすれば、三・四巻の主人公は孫臏です。孫臏と云えば、呉の孫武の子孫。孫武・孫臏と合わせて孫子の兵法で知られる稀代の兵家ですね。魏の龐涓に騙されて、黥刑・臏刑を受け死に頻していた所を、白圭に救われ斉に移ります。田文・孟嘗君に兵略を教えながら、田忌将軍の軍師として活躍。馬陵の戦いでついに龐涓を討つ所が四巻の最後です。

白圭を育ての親、孫臏を勉学の師とした孟嘗君が大活躍するのが第五巻となります (三・四巻では孫臏に従って小活躍?)。各国の宰相を歴任し、三千人ともいわれた食客達を率い、鶏鳴狗盗の故事に名高い函谷関抜けをする辺りがクライマックスです。

というわけで、本書「孟嘗君」は白圭・孫臏・孟嘗君の三人を主人公にした作品です。特に全編に渡って活躍をする白圭がかっこいい。臨終前に白圭が孟嘗君に言う言葉「助けてくれた人に礼をいうより、助けてあげた人に礼をいうものだ」p.292 にはグッときます。赤子の孟嘗君を救うことがなかったら、無頼の人間で終わったかもしれない白圭らしい言葉だけになおさら...

蛇足 1

孟嘗君が魏で宰相をしている間、燕の楽毅が斉を滅亡寸前にまで叩きのめします。宮城谷作品の「楽毅」では、彼が燕に移る前 (特に中山国で孤軍奮闘していた時)、ひっそりと助力していたのが孟嘗君となっています。が、本書ではそのシーンが全くありません。中山国に楽毅という将がいると認識しているだけです。もう少し楽毅との接点が多いと嬉しかったかな? でも、楽毅を孟嘗君が助けていたというのはおそらく宮城谷さんの創作でしょうから、そういうわけにもいかなかったのかもしれません。

それよりも、楽毅の宿敵とも言うべき趙の武霊王。彼こそ孟嘗君にとっても史実的にライバル的な存在だったわけで、そのあたりのしがらみが描かれなかったのは残念で仕方がありません。

そうそう、創作という点では、白圭が孟嘗君や孫臏を助けたというは宮城谷さんの創作でしょうね。でも、物語として読むと、ちょうど一本のストーリーになる転換点でもあるし、何より白圭がかっこいいので気にしないです。

蛇足 2

白圭と言えば、「臏 〜孫子異伝〜」(スーパージャンプで連載中) の最新号で孫臏の間者として白圭が登場しました。そんなバカな! とツッコミを入れたくなりますが、孟嘗君を読んで白圭大好きになってしまったので、どんな形であれマンガに登場するのは大歓迎です!

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