2011-03-09

SFはこれを読め! (谷岡 一郎)

図書館で「SF はこれを読め!」(谷岡一郎・著、ちくまプリマー新書) を借りました。

SFはこれを読め! (ちくまプリマー新書)
谷岡 一郎

4480687831
筑摩書房 2008-04
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著者の谷岡一郎氏は大阪商業大学学長 (2011-02 現在) で、大の SF ファンとのことです。

本書は大阪商業大学の授業「グレート・ブックス」の内容をまとめたものです。グレート・ブックスという授業は少人数の学生が、毎週一冊課題となる本を読んでクラスに集まり、その本について「あーでもない、こーでもない」と話をするという内容で、谷岡氏も数年に一度この授業を担当しているとのこと。当然、氏が担当する「グレート・ブックス」はテーマが SF となります。本書ではこの授業風景を反映させるべく、二人のサブ・キャラを立てて会話形式で本の紹介と感想を述べてゆきます。

紹介される本は SF の王道的な作品が多く、主に初心者向きと言えるでしょう。SF のコアなファンにとってはもの足りないかもしれません。SF 小説をかじって、ちょっと SF を読んでみようかな? なんて人に最適と思います。

私の場合、二つの点で良い点がありました:

  • 私は海外 SF ものばかり読んでいて、日本の SF 作品をほとんど知りませんでした。本書では日本の SF 作品もいくつか紹介されているので、日本の SF 小説を知るきっかけになりました。
  • 私は 1995 年頃から、SF よりライトノベルに重みを置くようになりました。そのため、2000 年以降の作品についてはほとんど知りません。本書は発売が 2008 年と比較的最近なので、新しめの作品も紹介されていて良かったです。

読みたい本リスト

この本は図書館で借りたので返さなくてはなりません。いくつか興味を引く本があったので、自分用のメモを残しておきます。

マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)
広瀬 正

4087463249
集英社 2008-07-18
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タイムトラベルものの作品。「あらすじ」だけ見るとミもフタもないけど、とにかくオモシロイ。これは読んでもらわないと話にならない、というほどの大傑作。日本 SF 界が生んだまさに金字塔的作品 (p.48)この本のオモシロイ点は、その設定もさることながら、細部のやりとりやエピソードだもんね、昭和初期の社会描写とか (p.49)。作者は「マイナス・ゼロ」を執筆して数年後、わずか 48 歳で逝去。「マイナス・ゼロ」は直木賞次点作品。

歴史俯瞰ものの作品。不死を得たある人々が、「あの人はぜんぜん年をとらない」とわかる前に次の社会へ移り、過去の蓄積を武器としていろいろな活躍をするというお話。いくら活躍しても、年をとらないことがバレる前にまた身分を変えて、顔と名前を知られていない別の社会に行かなくてはないない。身分 (ID) も取得しなければいけないわけで、長く生きるのも苦労するものです。永らく絶版になっていたけど、最近復刊されました。ムチャクチャおもしろいです (p.59)。「超人ロック」の超能力なしバージョンかな? 歴史と SF をからめた作品も好きなので期待。エンディングはどうなるのかしらん。

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)
マイク レズニック Mike Resnick

415011272X
早川書房 1999-05
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ユートピア SF。連作短編形式。ヒューゴー賞・ローカス賞・SF クロニクル賞・SF マガジン読者賞・ホーマー賞など 15 の賞を受賞。地球上で絶滅に瀕するアフリカのキクユ族のため、地球政府はある小惑星、「キリンヤガ」を彼らの楽園として保護します。むかしながらの自然に満ちたユートピアは、危険もありますが人々は固い絆で結ばれ、村の酋長や祈祷師、年長者を尊敬して生きていました。このユートピアを護る使命を背負う、祈祷師コリバを中心に話が進みます (p.63)。ユートピアと思っていた「世界」が実は超技術に支えられた「虚構」ってところに、「マトリックス」や「地球へ…」との類似性を見る気がします。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
テッド・チャン 浅倉 久志・他

4150114587
早川書房 2003-09-30
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短編集? テッド・チャンはまだ一冊しか本を出していません。それがこの短編集『あなたの人生の物語』ですが、彼はこの一冊ですでに伝説となっています。」ここに収められた短編八編は、どれもアイデアに満ち、文章もすばらしい (p.78)。2003 年発売。ちょうど私が SF から遠ざかっていた時期の作品です。興味津々。

リプレイ (新潮文庫)
ケン・グリムウッド 杉山 高之

4102325018
新潮社 1990-07
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タイムトラベルもの。歴史上の if を楽しむなら、広瀬正の『エロス』がおもしろく、そして読みやすい。(中略) 『エロス』は「もしあのとき……」を一回だけ経験していますが、何回も経験できるのが、ケン・グリムウッドの『リプレイ』です (p.130)

七回死んだ男 (講談社文庫)
西澤 保彦

4062638606
講談社 1998-10-07
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同じくタイムトラベルもの。ミステリー仕立てで、西澤保彦の『七回死んだ男』という本もあります。この本は何と主人公が何度も殺されながら、本人が真相に近づいていくという、メチャクチャな設定ですが、おもしろさは掛け値なし! (p.131)

最後に

「SF はこれを読め!」の最後には、主人公 (教授) とサブ・キャラ (学生) 二人のオールタイム・ベスト SF が載っています。これを読んで、自家版オールタイム・ベスト SF が書きたくなりました。機会があればエントリーにするかもしれません。

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