宮城谷昌光の「楽毅」(がっき) を読みました。
楽毅は中国戦国時代に活躍した燕の将軍です。漢の高祖・劉邦や三国志の諸葛孔明が楽毅を高く評価したことで名を高くしていますが、どんな将軍だったのかというとハテとんと知りません。その彼の半生を古代文献を繙きながらドラマティックに描いたのが本書です。
時代背景
楽毅が活躍したのは、戦国時代にて斉の孫臏が没した後のこと。最近、中国戦国時代を扱ったマンガが二本ありますが、ちょうどスーパージャンプで連載されている「臏 〜孫子異伝〜」とヤングジャンプで連載されている「キングダム」の間にあたる時代を生きた武将です (そういう意味でマンガ好きにも当時の時代背景を知る上でこの上ない小説だと思います ;)。
楽毅の頃、趙の武霊王は、胡服騎射 (一頭の馬に一人に戦士が乗るもの。それまで戦士は戦車に乗っていた) を採用し、燕にいた公子稷を秦国に送り昭襄王 (始皇帝の四代前の王) を立てて秦国との繋がりを強くします。
燕の国は後継争いで乱れ、それに乗じた斉国によって大きく荒廃します。燕の昭王は斉に復讐を誓いますが、国力がありません。良い武将も居ません。悩む昭王に「先づ隗より始めよ」と郭隗が言います。その言葉通り、楽毅は燕の昭王を訪ね、斉国滅亡への一手を指し始めます。
楽毅
戦国時代に中山国という国が生まれました。残念ながら戦国七国の一つに数えられるほどの力を持ちませんでしたが、楽毅はその中山国の宰相の子として登場します。若い頃、斉で孫子の兵法を学び、隣国・趙に進略されると知謀を持って退けます。しかし、楽毅をして中山国の愚王を救うことは出来ませんでした。中山国は趙に滅ぼされます。
そんな楽毅に燕の昭王が救けを求めます。大国・斉を倒すためです。楽毅は小国・燕が斉を討つために、外交を操り、軍略を閃かせ、遂に韓・魏・趙・楚・燕という五か国連合を作り上げます。大国・斉はこの戦を境に大きく衰亡します。
あとがき
楽毅が小国・中山国で奮戦する前半が特に面白い。斉の孟嘗君に影ながら支えながら味方を増やし、趙国に「楽毅という将軍がいる」と知らしめます。後半、燕が斉を攻めるシーンは一気呵成。前半の伏線が見事に回収されてゆく様は爽快です。途中、中山国を滅ぼした趙の武霊王が死ぬシーンは楽毅の話から少しズレてしまいますが、非哀なしには読めません。
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