2009-11-03

ドラゴンズ・ワイルド (ロバート・アスプリン) と氏の訃報

作者ロバート・アスプリンと言えば、コミカル・ファンタジー「マジカル・ランド」シリーズや SF シリーズ「銀河おさわがせ中隊」シリーズで有名な作家です。2000 年以降は共著ばかりが目立っていた氏ですが、ひさびさの単著ということで楽しみに本を買いました。

ドラゴンズ・ワイルド (ハヤカワ文庫FT)

物語は、「実はお前はドラゴンだ」と叔父から知らせれた主人公が... と筋を紹介するのはヤボな話。それは Amazon の商品説明でも読んで頂きましょう。

アスプリンの作品の特徴は、目覚ましい才能を持つわけでない (むしろ落ちこぼれな) 集団が、卓越したリーダー・シップを持つ主人公に率いられて一目置かれる存在になるストーリーにあります。その主人公において、自分に「リーダー・シップ」があると自覚しているのが「銀河おさわがせ中隊」のフール中尉で、自覚がないのが「マジカル・ランド」のスキーヴでしょう。今回のドラゴンズ・ワイルドはスキーヴと同じく、「自覚のない」タイプの主人公です。

でもまあ、そう書けばアスプリン作品のファンなら分かってくれることでしょう。こりゃ面白そうなお話しだ! と。

訃報

楽しく読み終わって、あとがきに入り驚いたことがありました。一文を引用しましょう。

すでにご存知のかたも多いと思いますが、2008 年 5 月 22 日、ロバート・アスプリン氏は心臓発作で急逝なされました (享年六十二)。

絶筆は、このドラゴンズ・ワイルドの次作 Dragons Luck。マジカルランド・シリーズ及びドラゴンズ・ワイルド・シリーズの続編は、マジカルランド・シリーズの共著作にもなったことのあるジョディ・リン・ナイ女史が引き継ぐとのこと。シリーズとしては、一まずの安心というところでしょうか。

それにしても残念なのはアスプリン氏です。マジカルランド・シリーズが絶好調だった 1995 年頃に突如の執筆中断。内外に諸問題を抱えていたそうで、マジカルランド・シリーズ再開のおりには「税務省との長い戦い」があったなどと語っています。

2000 年の復帰後は、共著で作品を出すことが多くなりました。マジカルランド・シリーズは、ページ数が厚くなり、テンポの良さとウィットさが無くなってしまいました。銀河おさわがせ中隊もいま一つ。思うに、アスプリン氏が持っていたキレが共著の形で発揮されなくなっていたのだと思います。

それが、ようやく単著作での復帰を果たし、ドタバタっぷりの中の主人公 (達) の成長を描くスタイルが戻って来たと思った矢先の訃報。本当に残念で仕方がありません。ファンの一人として、ご冥福を祈ります。

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