「このライトノベルがすごい! 2007」というムックで 2007 度の一位を取ったのは、この本が処女作という支倉凍砂 (はせくらいすな) の「狼と香辛料」でした。電撃文庫。第 12 回電撃小説大賞〈銀賞〉受賞作品。
ちょっと変わった題名ですよね。舞台は中世ヨーロッパ風の異世界。では、主人公は剣を帯びた剣士でしょうか。それとも杖を持った魔法使いでしょうか。いえいえ。なんと、馬に荷を引かせるしがない行商人です! 力が強いわけでもなく、天才的な頭脳を持つわけでもない。独立して 7 年目の若手の行商人。それが本編の主人公クラフト・ロレンス。一つ一つの商談を実直にこなしながら、どこかに旨い話はないものかと目を光らせている彼が出会うのが、本編のもう一人の主人公ホロ。彼女は年若い外見ながら狼の耳と尾を持ち、自分を齢数百年 (?) を経た狼であると言います。つまりは人狼です。ホロは外見に似合わぬ老獪さで、ロレンスをたじたじにさせます。そんな二人 (狼=ホロ、香辛料=ロレンス) が、商会や遣り手商人相手に騙し騙される、というのが「狼と香辛料」の粗筋です。
主人公は商人で、剣と魔法の代わりに商談と経済が話の中心だというのですから、一位を取る程の作品なのかと最初は穿って物を見ておりました。しかし、ライトノベルとは思えぬ程しっかりとした世界観。処女作とは思えぬ筆の働び。ロレンスとホロのテンポのよいやり取り。なにより、「金貨の貨幣価値が上がる」だの「為替のしめ切りがいつだ」などといった、馴染みのない話題を違和感なく物語の中に組み込むプロット。どれも、舌を巻くばかりです。
もし、「狼と香辛料」がハヤカワ文庫ファンタジーで発刊されてて、「○○幻想文学賞」や「英国○○大賞」なんて帯に出ていたとしても、私は驚きません。パトリシア A. マキリップの「妖女サイベルの呼び声」なんかとはれるんじゃないかしらん。というか、むしろ、この本は海外に翻訳して是非出版して欲しいほどです。うん。その価値はあると思います。
そんな、私のストライク・ゾーンど真ん中な「狼と香辛料」は既巻 3 巻。そして、明日、最新 4 巻目が発売とのこと。う〜ん、楽しみです。
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