定金伸治の「四方世界の王」という本がお気に入り。
月刊シリウスで雨音たかし氏によるマンガ版が連載されていて、面白いと思ったのがきっかけ。
物語の舞台は古代メソポタミア
主人公ナムルのいる国はバービルム。後のバビロニア。ハンムラビ法典を定めたハンムラビ王の治世が始まる直前が舞台です。Wikipedia によると、ハンムラビ王が生きたのは BC. 1810 年頃〜 1750 年頃とありますから、随分古い時代を描いた作品になります。
紀元前 19 世紀というと、古代エジプトは中王国時代に入りまだピラミッドが造られており、古代中国で最古の王朝「夏」が「商 (殷)」王朝に滅ぼされていた頃です。
バービルムは北にアッシュール、南にラルサという大国に挟まれ、両大国の緩衝地となっているのが現状。隣国エシュヌンナともども、なんとか国を潰されないように頑張っている最中です。題名に現れる「四方世界」とは、バービルム、アッシュール、ラルサ、エシュヌンナの四国を指し、それは (当時の認識としては)「世界の全て」を意味しています。
定金伸治作品のお約束。勝ち気で不思議なヒロイン・シャズに引きずり込まれるようにして、大国間の戦いに巻き込まれていくナムル。書記を目指していた少年が、シャズに「私とともに四方世界の王になれ」と言われるのですが...
物語
ヒロイン・シャズの深謀遠慮っぷりがなんとも魅力。一巻目のナムルは、シャズの謀略の歯車として走り回っているだけ (orz)。ナムルは主人公のくせに「何もできない」っぷりを大公開 (もとが書記見習いですから)。そんな彼が、シャズを守るために強くなるのが 2 巻目以降。
対する強敵にラルサのリム=スィーン王。まだ物語には影を落とす程度ですが、国土を充実させ、四方世界統一への覇権を狙います。「四方世界の王」には「胞体」と呼ばれる能力が出てくるのですが、その最大の「胞体能力者」がこのリム=スィーン王。きっと最強の敵となるのでしょう。ちなみに、シャズやナムルも胞体を使いますが、その力はこの世界で最弱。その最弱の力に謀略をかけあわせて強大な敵と戦かっていくところが、後半の面白味になってきます。
そして、今、魅力なのがアッシュールを一代で樹てた傭兵王シャシム=アダトと、エシュヌンナの天才イバルピエル王子。二人とも胞体の使い手でないにも関わらず、軍略と知恵と勘で大きく国を動かします。こういう能力者でない者達が、ナムルら能力者の大きな壁となったり味方となったりする物語運びが、「四方世界の王」の面白さでしょうか。
物語は続く...
「四方世界の王」は 2009 年 1 月から刊行開始。当初は毎月刊行・全 12 巻完結の予定だったそうですが、その計画は 4 巻目で挫折。2010 年 6 月に約一年ぶりの 5 巻目が発刊されました。その後書きに
書いていると、どうしても書きたいことや書かねばならないことが増えるのですね。巻数もたぶん二冊増えるかと思います。予定では全十四巻。(中略)
とはいえ、さすがにこのページ数で毎月というのは無理なので、ひと月おき刊行ということにさせていただきました。
とあり、第 6 巻は 2010 年夏発売と楽しみにしていたのですがまだ発売されていません。購談社の BOOK倶楽部 書籍発売予定表には、9 月・10 月と 6 巻発売の予告が出たものの、気がつくと予定表から消滅。マンガ版が掲載されている月刊シリウスにも原作第 6 巻は今冬発売とあるにもかかわらず2/26 発売の最新号で「今春発売」となっていました、4 月の予定表にも「四方世界の王 第 6 巻」の姿はなし。
こうなると、急がなくてもよいですので中途半端にせず完結を目指して欲しいものです。