ピアニストガイド
吉澤 ヴィルヘルム
青弓社 2006-02
Amazonで詳しく見る by G-Tools
「life@aka: ピアニストの系譜 〜 ピアニストガイド」の続き。本書の特徴は
- ピアニストの師弟関係を詳しく書いてあること
- 使用ピアノへの言及が深いこと
にあり、前エントリーでは、ピアニストの師弟関係について言及しました。本エントリーでは、使用ピアノについて言及します。
身近なピアノ
私達の身近にあるピアノ・メーカーを挙げてみましょう。国内であればヤマハ、カワイ。国外であればスタンウェイが有名でしょうか。
CD やコンサートではスタンウェイの比率が高く、ほとんどの CD で聞くピアノの音はスタウェイ・ピアノの音色と言って良いかもしれません。
しかし、世界には他にも有名・実力のあるピアノ・メーカーがあり、一部のピアニストはこだわりを持ってそれらのピアノを使って録音をしています。
多様なピアノ・メーカー
「ピアニストガイド」では、1 章を使って 11 のピアノ・メーカーの略歴と使用ピアニストの紹介をしています。ピアノが違うと響きも変わってくるので、ピアノ音楽が好きな人は本書で少しピアニストのピアノを知っておくと良いかもしれません。扱っているピアノは以下の通りです:
- スタンウェイ (独・米)
- ベヒシュタイン (独)
- ブリュートナー (独)
- グロトリアン (独)
- ベーゼンドルファー (墺)
- プレイエル (仏)
- エラール (仏)
- ファツィオリ (伊)
- ペトロフ (チェコ)
- ヤマハ (日本)
世界三大ピアノとして、スタンウェイ・ベヒシュタイン・ベーゼンドルファーの名前がよく挙がります。
スタンウェイ・ピアノはピアノ・メーカーでも少しこんがらがった歴史を持つメーカーなので解説を要約しまます。まず、スタンウェイ・ピアノがドイツにハインリッヒ・シュタインヴェーグと弟子のゲオルグ・グロトリアンによって作られます。その後、ハインリッヒらはニューヨークに移住。ドイツに残ったゲオルグは「グロトリアン・シュタインベーグ」というブランドでピアノを作り続けます。一方、アメリカに渡ったシュタインヴェーグは自分の名前の英語読み「スタンウェイ」ブランドを作成。その後、スタンウェイはニューヨークとハンブルグに工場を持つようになりますが、文化の違いでしょうか同じスタンウェイ・ブランドを冠していても音は違うようです。そのため、ニューヨーク・スタンウェイとハンブルク・スタンウェイと分けて呼ばれたりもします。こうして、ドイツに「グロトリアン・シュタインベーグ」と「ハンブルク・スタンウェイ」の二つのブランドが出来てしまったので、ブランド係争裁判が起こり、「グロトリアン・シュタインベーグ」は「グロトリアン」というブランド名に変更されました。
ほとんどのピアニストはスタンウェイを弾いていますが、他のピアノを使っているピアニストも少なからずいます。ほんの少しですが紹介しておきましょう。
ベヒシュタインの使用者はシュナーベル、ケンプ、カツァリス、フジ子・ヘミングなど。ベーゼンドルファーの使用者はリスト、バックハウス、グルダ、ヴェルナー・ハースなど。
ブリュートナーの代表ピアニストはアンネローゼ・シュミット。グロトリアンはギーゼキング。プレイエルはコルトーとダルレ。エラールはロンとインマーゼル。ファッツィオリはヒューイットとロルティ。ペトロフは柴野さつき。ボールドウィンはモラヴェッツ。ヤマハはリヒテルとピリス。
この他、本書にないピアノにはフランスのガヴォー (チッコリーニの録音あり) などがあります。
最後に、フランスを代表するピアノ、プレイエルとエラールについてショパンが残した言葉を引用して本エントリーを終わりにしましょう。
気分のすぐれないときには、音がすでに完成されているエラールのピアノを弾く。気分がよくて、求める音を得るために心が充実しているときにはプレイエルでなければなりません。
関連エントリー
- clmemo@aka: Bösendorfer スピーカーの現在 (Brodman ピアノについて)
0 件のコメント:
コメントを投稿