ピアニストガイド
吉澤 ヴィルヘルム
青弓社 2006-02
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「ピアニストガイド」という本は、300 人近いピアニストを網羅的に紹介している本です。私は、個人的な理由でこの本が嫌いです。しかし、個人の感情を抜きで評価すれば、本書はとても資料的に価値が高い良書であると思っています。
本書が特に類書と異なっているのは、二点の資料的記述にあります。一つはピアニストの師弟関係を詳しく書いてあること。もう一つは使用ピアノへの言及が深いことです。
本エントリーではピアニストの師弟関係、つまりはピアニストの系譜について言及します。
ピアニストの系譜
「ピアニストガイド」には、そのピアニストの師匠への言及が多く含まれています。これは、あまり類書では見かけないものです。ピアニストの師匠が誰なのか分かると、兄弟弟子が分かったりして思わぬ発見があったりします。また、好きなピアニストがいればその師もしくは弟子の演奏も聞いてみたくなるのではないでしょうか?
(図はクリックで拡大表示・ダウンロードできます)
上の図は本書の記述に従って、ピアニストの系譜をグラフ化したものです (ref. clmemo@aka: ピアニストの系譜を描いてみた)。
図にしてみると、少ない例外を除いて 2 つの大きな系譜があることが分かります。
一つはツェルニーを始祖としたドイツ・ロシア系の系譜。もう一つはマルテルモンを始祖としたフランス系の系譜です。
ツェルニーには二人の重要な弟子がいます。一人目はリストです。リストの弟子は多く、その孫弟子がロシアの音楽院などで名教師 (ゲインリヒ・ネインガス、ゴリデンヴェイゼル、イグムノフ) になって、更に有能なピアニストを育てています。二人目はレシェティツキーです。彼はピアニストよりも名教師として知られ、シュナーベル、エリー・ナイ、ザイドルホーファーといった名ピアニスト・名教師を排出しました。
マンテルモンの弟子には、作曲家が多いです。ドビュッシー、ビゼー、アルベニス、デュカスらはマンテルモンの弟子でありました (作曲の師ではなくピアノの師であったと思いますが...)。マルテルモンがピアニストの系譜の上で重要なのはディエメールという名教師を生み出したことでしょう。ディエメールはコルトー、ナット、レヴィといった名ピアニスト・名教師を排出しました。
蛇足になりますが、ネインガスの弟子・孫弟子にはリヒテル、ギレリス、ヴェデルニコフ、アファナシエフなどが、ゴリデンヴェイゼルの弟子・孫弟子にはフェインベルク、カプースチン、ベルマン、ブーニンなどが、イグムノフの弟子・孫弟子にはグリンベルク、オボーリン、アシュケナージ、プレトニョフなどがいます。
図では、弟子・孫弟子関係について次の様に色分けを行ないました。
- 赤: リスト
- 青: レシェティツキー
- 緑: ディエメール
- オレンジ: イグムノフ
- むらさき: ゲンリヒ・ネイガウス
- ピンク: ゴリデンヴェイゼル
あとがき
ピアニストの系譜図を作るに当たって、日本人ピアニストは極力省きました。
日本人以外でピアニストの系譜図に載っていないピアニスト及びその師弟関係をご存じの方がいらっしゃったら、コメント頂けると嬉しいです。