2012-04-26

アシモフ初期作品集 (アイザック・アシモフ) 感想

アシモフの初期作品集 (全 3 巻) を読み終えました。

カリストの脅威 (ハヤカワ文庫SF―アシモフ初期作品集) ガニメデのクリスマス (ハヤカワ文庫 SF―アシモフ初期作品集 (1142)) 母なる地球―アシモフ初期作品集〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

アシモフが初めて作品を売りに出し始めてから、ボストンに引越するまでの時代の短編を集めた作品集です。アシモフの短編集というと、作品の前後にアシモフ自身のコメントが入っているのが特徴です。本書でもその趣向は受け継がれていて、半分、掛け出し作家のアシモフの自伝になっています。

本書は、アシモフの短編集「われはロボット」や「夜来たる」などから洩れた初期作品を集めているので、アシモフの代名詞であるロボット物やファウンデーションものは登場しません。もちろん、高名な「夜来たる」も収録されていません。アシモフのコメントは、それらの「売れた作品」の合間にこういう作品を書いた... という体で書かれています。

読んでみると、なるほど「アシモフらしいキレ」がないと思う作品もあれば、後の未来史シリーズで見かけるようなアイデアのはしりを見ることが出来たり、何故他の短編集に収録されなかったのか不思議と思う良作もあります。玉石混淆と言ってしまえばそれまでですが、意外な良作と出会えるのも楽しいところです。

それと、アシモフ・ファンにとって重要なのは、名編集者・キャンベルとの出会いが詳しく書かれていることです。アシモフはキャンベルという編集者の許で成長した SF 作家として有名ですが、その出会いについて詳しく知ることはあまりありません。初めての出会い。何度もボツにされたこと。初めてキャンベルが作品を買ってくれたこと。そして、やっぱりボツにされる作品が出たこと (短編集「聖者の行進」を読むと、アシモフは意外とボツにされることが多い作家さんなのが分かります)。その中でロボット物が生まれ、「夜来たる」が有名になり、ファウンデーション・シリーズが始まってゆく。本書は、アシモフとキャンベルの出会いと別れを知ることの出来る意味でも、有意義なものでした。

第三巻の巻末には、キャンベルとの作品 60 タイトルが掲載されています。その最後の作品はファウンデーション・シリーズの最後の中編でした。「しかし、分かっていなくもある」。何とも言えない哀愁を感じました。

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