「その名は101」は「バビル2世」の続編です。バビル2世と言えば横山光輝の代表作の一つです (他に鉄人28号、三国志、水滸伝 etc.)。
2010 年 2 月。野口賢氏による続編、バビル2世ザ・リターナーが発表されました。そのザ・リターナー 第一巻の巻末に、横山光輝自身が描いたバビル2世の続編「その名は101」の情報がありました。
おさらい
バビル2世は 5000 年前に地球に不時着した宇宙人・バビルの子孫。バビルの超能力を受け継ぎ、正統な後継者として認められます。彼を守るのは、バビルが遺した AI コンピューター「バベルの塔」と三つのしもべ: 何にでも変身できるロデム、巨大な鳥型ロボット・ロプロス、巨人ロボット・ポセイドン。
バビル2世の敵は、世界征服を企むヨミ。彼もまたバビルの子孫であり、超能力でありました。しかし、バベルの塔からは後継者としての資格を満たさずと判じられます。バビル2世の物語は、ほぼ同等の能力を持つ 2 人の戦いを描いたものでした。
ストーリーは大きく 4 つに分けられます。バビル2世とヨミが一騎打ちをして、ヨミを倒すまでの第一部。心停止からからくも蘇ったヨミが復讐戦に乗り出し、超能力増幅装置でバビル2世を追いつめるも、能力の過剰利用で衰弱死するまでの第二部。宇宙から飛来したヴィールスにより超能者が生み出される。宇宙ヴィールスにより蘇生したヨミは力を増し、今まで以上にバビル2世を翻弄。最後の直接対決でバビル2世の力を上回った代償に老人と化し死期を悟り去るヨミを描く第三部。そして、南極に自分のバビルの塔を作ろうと模索するヨミと、その企みを阻止しようとするバビル2世を描く第四部。
長編でありながら、一人の敵と何度も対決をするバトル・マンガというのも珍しいのではないでしょうか。また、そのヨミが冷酷・無慈悲に見えて、部下想い。抜群のカリスマを持ち、専制君主の様でありながら、会議を開いて部下の意見を吸い上げるソツの無さ。部下に親われ、読者からも愛されるわけです。
その名は101
「その名は101」のストーリーは、本編第三部と第四部の間の出来事を描いています。
バビル2世の血液を輸血された人間は、バビル2世と同じ様な超能力を持つことに気がついたアメリカ・CIA。彼らはバビル2世に人命救助の研究と偽って、施設に囲いこみ血を (自分の意思で) 提供させます。その企みに気付き、施設から脱出するところから始まるのが「その名は101」。「101」とは、アメリカ・CIA が付けたバビル2世のコードネームです。
バビル2世は、自分の血液によって誕生してしまった超能力者たちを倒してゆきます。今までヨミとばかり闘っていたバビル2世が、自分のクローン能力者及びアメリカを敵として戦う異色な作品です。
本作では、三つのしもべが水爆基地に幽閉されバビル2世の呼び声に応えることができません。そのため、バビル2世は孤軍奮闘を強いられるわけですが、そこはバビル2世。既にヨミという強敵と三度もの死闘を演じて戦闘経験豊富。いくらクローン能力者といえ、経験値が違います。一蹴とはいかないまでも確実に勝利を重ねてゆきます。
CIA は自国の利益に主眼を置く上にトップも頭が良ろしくない。大きな権力を持つ者の自分勝手な振る舞いを叩きつぶすバビル2世が頼もしい。
ところで、ヨミは世界征服を企むとはいえ人格者で頭能明晰。そこにストーリーの明るさがありました。「その名は101」が知られざる作品になったのは、「敵」の魅力に欠けたこと一因かもしれません。