2011-11-17

小悪魔アザゼル 18 の物語 (アイザック・アシモフ) を読む

アイザック・アシモフは私が大好きな作家の一人です。世間的には SF 御三家の一人として有名ですね。そんなアシモフの短編集と言うと、大まかに三つに分類されます。1 つは SF のロボット物。もう 1 つはロボット物以外の SF 短編。そして最後にミステリー短編 (黒後家蜘蛛の会ユニオン・クラブ綺談) です。

今回、紹介する「小悪魔アザゼル 18 の物語」はこれらの短編とは一線を画す短編集です。一言で言えばブラック・ユーモア集。ジャンルは現代を舞台にしたファンタジー。実は、これらの短編を SF として書く話もあったそうなのですが、紆余曲折を経てファンタジーに定着。ここら辺の話は、後書き・前書きを書くのが大好きなアシモフ氏自身が「長い前書き」を書いているので、そちらを参照して下さい。

「アザゼル」は、作者(アシモフ自身) が「2cm の悪魔」を呼び出せると豪語するジョージから上手く話を聞き出す、という形式。ジョージは金払いが悪く、人からお金をせびることばかり考えているような人間。しかし、彼の話の中では、周りの人達に信頼されて相談を持ちかけられずにはいられない好人物と描かれています。いやいや、君はそんな人を信頼させられる様な人間じゃないよ... なんて作者(アシモフ) も考えながら、ついついジョージに気を許してしまう辺り、読者としてはおやおやと思ってしまいます。

さて、黒後家蜘蛛の会をお読みの方ならご存じでしょうが、アシモフは後書きすら書くのが大好き。普通、短編小説には最後に後書きを書くものなのに、アシモフは短編ごとに後書きを書いています。で、その文体が面白いのですね。ちょっと高慢で何でも出来るぞ、ってな態度で書いているのです。でも、これが不思議と気を悪くしないんですね。

本編に出てくるジョージは、正にそんなアシモフ像をそのまま主人公にして、お金と女に弱くした感じ。つまり、アシモフの分身であるジョージの話を、作者(アシモフ) が聞いて本にしている。という、ちょっと面白い構成を取っています。なので、ジョージが作者をバカにする台詞も、アシモフが自分自身をネタに自虐ネタをやっているというブラック・ユーモアになっています。そして、ジョージがお金もうけを考えて、「悪魔アザゼル」に願いごとをして失敗に終わる、という毎回のお話も、アシモフ自身の毒が入っていてまた良いんですね。何が良い? アシモフの高慢な姿が「読者への仮の姿」であり、ブラックなドギツさが薄められるのが良いんです。

レーガン大統領のジョーク

「天と地と」という短編では、例外的に作者(アシモフ) の長舌が入ります。そこで話題になるのは、レーガン大統領のジョーク。短くて面白い。お気に入りなので、ここに引用します。

深刻化する国家予算の赤字に頭を抱えたレーガン大統領が、どうにか解決方法はないものかと物理学者にこうたずねた。二足す二はいくつだね? 物理学者は即座に答えた。四です、大統領閣下

レーガンは指を折って数えながらしばらく考え、納得がいかず、次に統計学者にたずねた。二足す二はいくつだね? 統計学者は少し考えてから、こう答えた。小学校四年生を対象に行った最新の調査結果から平均値を求めましたところ、大統領閣下、約四となっております。

けれども問題は国家予算なので、レーガンは結局その分野の第一人者に相談すべきであると考え、今度は経済学者にたずねた。二足す二はいくつだね? 経済学者はブラインドを下ろし、素早くあたりの様子をうかがってから、こうささやいた。どのような答えをお望みですか、大統領閣下

痛烈な皮肉のこもった (特に大統領付きの) 経済学者へのブラック・ジョークです。

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