2012-06-27

万能鑑定士 Q の事件簿 (松岡圭祐) 〜 人の死なないミステリー

ミステリーの好きな安宅です。最近、「人の死なないミステリー」系にハマッています。きっかけは、本屋に平積みにされていた「万能鑑定士 Q の事件簿」です。

万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)

全 12 巻、全 11 エピソードを通して「殺人事件」が起きないこのシリーズ。基本、対決相手は「詐欺」ということになります。

主人公は凜田莉子。冲縄は波照間島出身。人一倍感受性が高いのが長所。短所は勉強が全く出来ないこと。国語・英語・数学はいうに及ばず、歴史に地理に化学に物理、一般常識も事欠くありさま。もちろん、謎解きなんか全く出来ないわけで... 高校の先生も頭を悩ます問題児。これで心根も良くて天然で人を疑うことを知らない、っていうんですから社会に出したらネギが鴨を背負って出かける様なもの。先生も心配が尽きません。そんな彼女の希望は「東京に出て就職したい」!!

そんな莉子が東京に出て数年後。彼女は「万能鑑定士 Q」の看板を掲げて独立していました。一体、彼女はどうやって「鑑定」が出来るほどに成長を遂げたのか!? 第 1 巻と第 2 巻は、シリーズで唯一の上下巻構成で (他は全て一冊完結型) 莉子の挫折・師との出会い・成長を描くとともに巨大な詐欺事件との対決を描きます。

彼女の勉強法は特殊ですが、なかなか理に適ったもの。何より、一つ一つ苦手分野を潰して成長する姿は読んでてとても楽しいです。

シリーズは、1 巻目で出会った週刊角川の記者・小笠原悠斗とのタッグで進みます (10 巻のみ過去編)。この悠斗。莉子と出会ったことで、普段は凡打ばかりだけど時々特大ホームランを打つ期待の星、と目されるようになります。ダメなのか優秀なのか分かりませんね。でも、莉子にとっては確実に心の支えになるパートナーです。すると、やっぱりロマンスを期待してしまうんですが、これが中学生の恋愛か? と言うほどに遅々として進みません。もうちょっと彼氏力を上げて欲しいものです :p

人気ランキング

「事件簿」完結記念フェアとして、2011 年 12 上旬には読者が選ぶ人気ランキングがありました。

女性読者の得票率 1 巻は 11 巻。男性読者は 9 巻。全読者の結果は以下の通りです:

  1. 事件簿 11: 京都を舞台に兄妹弟子の対決
  2. 事件簿 9: 「モナ・リザ」をめぐる事件
  3. 事件簿 6: 万能贋作者・雨森華蓮登場
  4. 事件簿 10: 過去編。万能鑑定士開業直後の事件
  5. 事件簿 12: 大阪を舞台に「太陽の塔」をめぐる事件
  6. 事件簿 7: 人気女性雑誌に編集長第二秘書として潜入
  7. 事件簿 5: パリを舞台に元担任教師との珍道中
  8. 事件簿 8: 台湾を舞台に高校時代の旧友三人での珍道中
  9. 事件簿 2: 1 巻の続き・完結編
  10. 事件簿 3: 音楽プロデューサーとの対決
  11. 事件簿 1: 莉子初登場。2 巻に続く
  12. 事件簿 4: 放火犯との対決

この他にも、色々な人がベスト 3 を挙げています。角川書店社長・井上伸一郎が選ぶベスト 3 は「6 巻・10 巻・8 巻」、著者・松岡圭祐のベスト 3 は「6 巻・11 巻・9 巻」、担当編集者・岸山征寛のベスト 3 は「2 巻・6 巻・5 巻」とのこと。

私もベスト 3 を挙げておきます。「6 巻・1 巻・7 巻」! 万能贋作者との対決は手に汗握るし (6 巻)、莉子の成長を描いた 1 巻はとにかく面白いし、女性雑誌に潜入捜査に入る異色物 (7 巻) は莉子の別の一面も見せつけてくれて良かったです。

あとがき

作者・松岡圭祐はシリーズ全部で 600 万部を越える「千里眼」シリーズというものを持っています。主人公は元自衛官で臨床心理士。知識豊富でアクション万能。トム・クランシーの様な大型サスペンス物です。大風呂敷を広げすぎてるせいか荒唐無稽。それがこのシリーズの良さでもあるわけですが、個人的には主人公が「鑑定士」という謎解きに特化した本シリーズの方が好みです。

万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿 II (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿III (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿IV (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿V (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿VI (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿VII (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿VIII      (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿IX (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿X (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿 XI (角川文庫) 万能鑑定士Qの事件簿XII (角川文庫)

8 件のコメント:

  1. 万能鑑定士、気にはなっているんだけどすでに既刊がたくさんあって本代が嵩むなぁと思って躊躇しています。

    最初は1巻だけでもシリーズが進めば本代が嵩むのはいっしょなんですがね。読みだすと止まらないので一気に本代がかかるのはちょっと厳しい。

    懐に余裕があるときに読んでみることにします。

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    1. 岡野さん、こんにちは。

      おお、岡野さんも万能鑑定士 Q に興味をお持ちでしたか。失礼ながら、岡野さんはミステリーを読むなら厚い本格ミステリーを嗜まれるものかと想像していました。

      > 本代が嵩むなぁ

      そうですね。一冊が安くとも 12 冊分ともなるとね。待てる様なら、ブックオフでおとな買いという手もありますが... 作者の松岡氏はこう見えてなかなかのクセモノで、既刊の別シリーズの主人公をゲスト主演させてきます。万能鑑定士 Q だと、4 巻に「催眠」の嵯峨を登場させていて、気になってそっちにも手を出してしまうという。なかなかあざとい。。。

      懐に余裕がなければ、「ビブリア古書堂」シリーズが面白いですよ。こちらも後でブログに書こうと思っていますが、「人が死なないミステリー」なのと、「本への愛情がつまっている」ことと、なにより既刊がまだ 3 巻しか出ていない点がオススメです。

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    2. 軽いのから重いのまで何でも読みます。重いのは古典名作中心で最近の作家のものはどちらかというと軽いのが多いですね。少年時代の愛読書がルブラン、ドイル、ベルヌあたりなので好みは推して知るべしです。

      ミステリーよりファンタジー中心なのでミステリーは後回しになりがちです。気になる本が多すぎて。

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    3. > 少年時代の愛読書がルブラン、ドイル、ベルヌあたり

      私とそっくりじゃないですか!! すると、SF はアシモフ、ハインライン、クラークあたりを経由し、推理小説はクリスティに手を伸ばした感じでしょうか。

      > ミステリーよりファンタジー中心

      ぐはっ。指輪物語、ナルニア国物語、ゲド戦記は基本で、ドリトル先生、グリーンノウなんかに手を伸ばしました? さ、最近面白いファンタジーって何でしょう? お勧めがあったら教えてください。

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    4. SFはディック、ミステリーはキングに走りましたw。創元社やハヤカワの著名作品はかなり読んでいますが。

      最近読んで面白かったのは読み切りものでは「シュガーダーク」ですね。ラノベに分類されていますがライトといえないダークな物語です。今読んでいるのは「新月が昇るまで」。電子書籍版は2巻で止まっているので続きが読めない。困ったものです。

      剣と魔法の物語はどうしても少年向けになりがちなので日本では売るために萌え要素が付加されてしまいますね。ラノベの中でも萌え要素を外せば本格ファンタジーとして通用する(けどそうすると売れないだろうな)というのが結構あります。

      そんな中で面白かったのは「剣の女王と烙印の仔」。ラノベなので女の子がたくさん出てきますが、男は主人公だけでモテモテ、とかいうラノベのテンプレ的構成ではなくて、男女それぞれがペアになってそれぞれの愛の形、それも恋愛だけでなくお姫様に忠誠を誓う騎士の愛とかもあってファンタジーを楽しめます。

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    5. なるほど。SF はディックに走りましたか。キングはミステリー? 創元・ハヤカワは良い作品を入れてくれますよね。海外 SF/ファンタジー/ミステリー・ファンとしてはありがたい存在です。

      > 最近読んで面白かったのは...

      フムフム。「シュガーダーク」「新月が昇るまで」「剣の女王と烙印の仔」どれも読んでません。チェックします!! いやあ、良い情報をありがとうございます。

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    6. キングはミステリーというよりサスペンスなんですが、ホラーに分類されているようですね。

      今回紹介した作品はいずれも人がたくさん死にます^^;
      日常の一部を切り取った作品であれば作中で人が死ぬ必要はないですが、小説の舞台になる世界の地図が必要になるようなスケールの作品だと生死を含めての物語になるので人の死は必然ですね。

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    7. > キングはミステリーというより...

      キングは、シャイニングと IT を読みました。シャイニングはサスペンス的ですね。IT はホラーかなぁ。クーンツと並んで好きな作者です。

      > 今回紹介した作品はいずれも人がたくさん死にます^^;

      いやぁ〜。が、がんばって手を出してみます。

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