本は本でも、絵本の紹介です。猫好きにはたまらない絵本。「空飛び猫」。羽根が生えた猫たちの冒険を描いた本です。
作者は アーシュラ・K・ル=グウィン (Ursula K. Le-Guin)。ル=グウィンは SF・ファンタジー界の大作家です。SFの代表作には 「闇の左手」(ヒューゴー、ネビュラ賞受賞)、「所有せざる人々」(ヒューゴー、ネビュラ、ロータス賞受賞) が、ファンタジーの代表作には (もはやセミ・クラシックとなった) 「ゲド戦記」(全 6 巻) があります。
そんな彼女が描いた子供向けの本が空飛び猫シリーズです。一冊 100 ページ未満。文字は大き目で、半分近くが挿絵ですので、早ければ小学生前の子供でも楽しめるのではないかと思います (漢字がありますから、親が読み聞かせる必要があると思いますが)。
「空飛び猫」は空飛び猫シリーズの第一弾です。
お母さん猫が子供を産んでみたら、なんと子猫には羽根が付いていました。生まれた子猫は四匹。セルマ、ロジャー、ジェームス、ハリエットと名付けました。しかし、お母さん猫には「羽根」の意味が分かりません。猫に羽根は生えていないからです。
ある日、犬に追われて大きく跳び上がったところ子猫は空を飛んで犬の届かない場所まで上ってしまいました。お母さん猫はそれで納得します。羽根は空を飛ぶためのものなのだと。
そしてお母さん猫は子猫たちに言うのでした。この街はお前たちのために良くない。もっと良い場所を探しなさない。もう巣立ちの時期ですよ、と (実際、猫はすぐに大人になりますからね)。四匹の兄弟姉妹は力を合わせて新天地を探しに出ます。途中、フクロウにいじめられたりもします。最後に彼らはハンクとスーザンという心優しい人間達と出会うことができるのでした。
「帰ってきた、空飛び猫」は空飛び猫シリーズの第二弾です。嬉しいですね。セルマ、ロジャー、ジェームス、ハリエットが帰ってきました。
今回は里帰りのお話。幸せな生活を送りつつも、お母さん猫の近況が気にかかる空飛び猫たち。そこで、ジェームズとハリエットがお母さん猫に会いに街に戻ることになります。街に戻って、二匹はびっくり。黒い子猫が高いビルに住んでいるではありませんか。そのビルは取り壊し直前。しかも子猫には「羽根」が生えていました。
二匹は黒い子猫を助け、お母さん猫と再会します。そして、子猫が自分達の妹だと知るのでした (ジェーンという名前です)。ジェーンは「ミー」と「嫌いだ」の二言しかまだ喋れないのですが、言葉以上にその様子が愛らしくてしょうがありません。ちなみに、初めてジェームズとハリエットがジェーンに出会った時、彼女は迷子で助けを求めていました。「ミィィィー」「ミィー」と鳴くのです。これはアメリカの猫が「ミィ」と鳴くのと、自分だよという意味の「me」をかけ合わせているのですね。とても印象的で可愛いい出会いのシーンでした。
続編について
私は上記二冊までしか読んでいません。しかし今回、エントリーを書くに当たって調べてみたところ、「空飛び猫」シリーズは 4 冊刊行されていることを知りました。一応、リンクを張っておきます。
三冊目は「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」、四冊目は「空を駆けるジェーン」という題名です。
訳者について
本シリーズの訳者は作家で有名な村上春樹です。どうやら村上氏は猫がお好きな様子。このシリーズを原書で見つけて、是非翻訳したいと持ちかけたそうです。
巻末には「訳」に対するちょっと長めの注釈が入っています。例えば、上に紹介した「ミィー」というのも、この注釈で知ったことでした。とても丁寧な注で、本文と同じくらい楽しめてしまいます。極めつけは、「〜というのは猫が照れ隠しをするときの様子です」と訳注ではなく猫の仕草の説明までして下さっています。本当に猫がお好きなんでしょうねぇ。
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