「ザ・シーカー 光の六つのしるし (The Seeker - The Dark is Rising)」の DVD を借りました。この作品は、児童文学「闇の戦い」シリーズの一作目「光の六つのしるし」を映画化したものです。
私は、原作「光の六つのしるし」の大ファンです。中学時代、一番好きなファンタジーは「光の六つのしるし」でした。当ブログで、3 つ目のエントリーで取り上げたのは「光の六つのしるし」でした (これは当ブログの最初の書評エントリーでもありました)。
ザ・シーカーはひどい
しかし、映画「ザ・シーカー」はひどい出来でした。泣きたくなるほど原作が改変されていました。ここは一つ、旧書評エントリーを引きながら、ザ・シーカーの改変具合を紹介してみましょう (以下、ネタバレありです)。
「闇の戦いシリーズ」は、アーサー王伝説を下敷きに<光>と<闇>の時間を越えた戦いを描いたファンタジーです。時間を越えるといってもタイムトラベルを繰り返す冒険活劇ではなく、失われた都市を訪ねたり、微かな音楽の調べとともに時間の門が開いたり、旅人が各地を巡るように主人公たちは静かに時の流れを巡ります。
「時間を越えるといってもタイムトラベルを繰り返す冒険活劇ではなく」。。。思いっきり、タイムトラベルを繰り返していました。ほとんど SF 映画でした。
「失われた都市を訪ねたり」。。。訪ねませんでした。
「微かな音楽の調べとともに」。。。微かな音楽なんてどこ吹く風です。どんな音楽を作曲しているのか、とっても楽しみだったのに!!
「音楽の調べとともに時間の門が開いたり」。。。現れませんでした。これも、どう映像化するか楽しみだったのに! 植物が丁度ゲートみたいな形を作ってて、そこを通ると時間を遡るみたいな、お手軽な映像化で済ませられていました。
「主人公たちは静かに時の流れを巡ります」。。。行く先、行く先で争いが起きているのは何故でしょう。全然、静かじゃないです。
では原題の「The Dark Is Rising」は何に由るかというと、これはシリーズ全体で詠われる予言の詩 (後略)
ファンとしてはとても残念なのですが、この予言の詩は現れませんでした。「The Dark Is Rising」というシリーズ名を、この作品は消し去りたいようです。
<光>との何千年にも渡る争いに、終止符を打つべく<闇>の軍勢が起ち上がる。「光の六つのしるし」は、そんな不穏な影が忍び寄るクリスマスの朝から始まります。雪のちらつく中、次第と牙を剥く<闇>の脅威。主人公のウィル・スタントンは、11 歳の誕生日を迎えたその日に、<光>の最後の<古老>たる力に目覚めるのです。
「不穏な影が忍び寄るクリスマスの朝から始まります」。。。始まりませんでした。クリスマスが始まるまで、学校行ったり、部屋の中で過ごしたり。非常に退屈な家族模様を見せつけられます。何時になったら本編に入るのかと、突っこみたくなりました。でも、後になって、これは伏線なのだと分かりました。
「主人公のウィル・スタントンは、11 歳の誕生日を迎えたその日に」。。。ウィルは 14 歳になりました! 「1 が二つ並んだな」という象徴的で印象的な台詞も、当然出てきませんでした。11 歳というのはハリー・ポッターがホグワーツに入学した歳です。二つの映画の二人の 11 歳をを観比べるのを楽しみにしていたのですが (以下略)。
まだまだあるよ
まだまだあります。
映画お決まりの改変も盛り沢山です。家族構成はメチャクチャです。スタントン一家はアメリカ人です。グウェンはウィルの妹です。しかもウィルは双子です。その片割れは、赤ちゃんの時に誘拐されてます (ビックリ)。そしてウィルは恋をします (何の映画?)。
古老最強の老婦人は、ヘビに襲われて「ウィル急いで〜」と叫んでます (泣!)。最初の古老メリマンは、小五月蝿いばかりです (あなた、正体は魔法使いマーリンでしょうが! orz)。最後の古老ウィルは、いつまで経っても子供です。しかも先祖も古老です (へ〜)。その先祖の古老が「六つのしるし」を作りました (もう好きにして!!)。
六つのしるしを探す順番もデタラメです。しかも、しるしは五つしか出てきません。最後の一つは、ウィル本人なんですって (奥さん、聞きましたっ!?)。もう、賢者の石はハリー・ポッター自身だとか、一つの指輪はフロド・バギンズだとか言われたって、驚きませんよ...
闇をやっつけたら、双子の片割れが家族に戻って来て、大学やめた兄も和解して、とにかく家族はハッピーになりました。ここポイントです。実はこの映画、「家族を守る」という映画だったのですね。本編に入る前に、退屈な家族交流を見せてくれてたのは、この伏線だったわけです。ウィルが子供なのも、恋をするのも、他の古老がおざなりなのも、み〜んな「家族」を映画の中心に据えた結果です。とってもアメリカンです。
末っ子が、家族の知らないところで、家族を守る。なんかホーム・アローンみたいですね
あとがき
映画版は見ないで、原作を読むことをおすすめします。そちらの方が有意義です。
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