2005-08-20

The Dark Is Rising

「The Dark Is Rising」は英国の女流児童作家スーザン・クーパー女史の代表作で、邦題を「光の六つのしるし」といいます。「光の六つのしるし」は続編の三冊、それとシリーズ化の構想もない時期に書かれた作品一つと併せて「The Dark Is Rising Sequence」というシリーズを構成しており、日本では「闇の戦いシリーズ」として親しまれています。

「闇の戦いシリーズ」は、アーサー王伝説を下敷きに<光>と<闇>の時間を越えた戦いを描いたファンタジーです。時間を越えるといってもタイムトラベルを繰り返す冒険活劇ではなく、失われた都市を訪ねたり、微かな音楽の調べとともに時間の門が開いたり、旅人が各地を巡るように主人公たちは静かに時の流れを巡ります。この作品にとって、時間は必ずしも世界を支配しているものではありません。作中では、何度も過去は未来に影響を与え、未来は過去に影響を与えるといわれています。時間の概念云々をいうファンタジーも珍しいですが、そもそもアーサー王伝説に出てくる魔法使いマーリンが時間を逆に生きる予言師であり、「闇の戦いシリーズ」の主要キャラクターなのですから、むしろ正当なファンタジーなのかもしれません (あくまで、アーサー王伝説を下敷きにしたファンタジーとしては、という意味ですが)。

邦題の「光の六つのしるし」は、主人公が<光>側の切り札となる六つのしるしを集めることに由っています。では原題の「The Dark Is Rising」は何に由るかというと、これはシリーズ全体で詠われる予言の詩

When the dark is rising, six shall turn back...

<闇>の寄せ手が攻め来る時、 六たりの者、これを押し返す...

の冒頭から来ています。「When the dark is rising」が「 <闇>の寄せ手が攻め来る時」とは名訳ではありませんか! 直訳すれば「<闇>が起ち上がるとき」、書名にするなら「<闇>の蜂起」となりましょうか。<光>との何千年にも渡る争いに、終止符を打つべく<闇>の軍勢が起ち上がる。「光の六つのしるし」は、そんな不穏な影が忍び寄るクリスマスの朝から始まります。雪のちらつく中、次第と牙を剥く<闇>の脅威。主人公のウィル・スタントンは、11 歳の誕生日を迎えたその日に、<光>の最後の<古老>たる力に目覚めるのです。

私は中学生で「光の六つのしるし」を読み、以来シリーズのファンです。中学時代、一番好きだった本は、自信を持って「闇の戦いシリーズ」だと言えます。もうすこし言えば、私は欠点を含めて主観的に一番好きなものと、客観的な評価 (?) で好きなもの (それでも十分主観が入っていますが...) を分ける傾向があります。そして、客観で見たファンタジー No.1 は (当然?) 「指輪物語」で、主観的ファンタジー No.1 が「闇の戦いシリーズ」になります。つまりは大好きということです。

ファンタジーに餓えているなら、是非この一冊を手にとって見てください。大人でも楽しめると思います。

光の六つのしるし
4566013006
スーザン・クーパー 浅羽 莢子


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