2012-03-12

ストラディヴァリウスを弾いてみた

なお&トラちゃんのお友達つながりで、ストラディヴァリウスのヴァイオリンを聴く機会を得ました。会場はなお&トラちゃん邸。13 時集合。新しい iPad (Wi-Fi + 4G) の予約を朝一で済ませて、お宅に向かいました。

私の到着と前後して、なお&トラちゃんの友人・知人が集まりました。総勢 6 人 (私を含めて)。なお&トラちゃんとヴァイオリニストを含めると、8 人が一般家庭にお邪魔するという事態に。初体面の方ばかりだったので、自己紹介をしながらイベントの開始を待ちました。

ストラディヴァリウス 1725

ストラディヴァリウスを持って来られたのは、黒沢誠登 (くろさわ まこと) さん。東京フィルハーモニー交響楽団の現役ヴァイオリニストです。東京フィルの公演では普通 (?) のヴァイオリンを使用しており、このようなイベントでストラディヴァリウスを弾くとのことです。

最初は貸与品かと思いました。しかし、話を聞くと個人所有。ストラディヴァリウスを持つ人の多くが、「買おうとして買ったんじゃない。自分の許にストラディヴァリウスがやって来たんだ」と言うそうですが、黒沢さんの場合も同じだったそうです。黒沢さんがチェコに旅行に行った時、たまたま出逢ってしまった。それが、黒沢さんの持つストラディヴァリウス。1725 年製作。

イベントの前後で写真会になってしまったのですが、最初に写真をお見せしましょう。

黒沢誠登 plays ストラディバリウス 1725

ストラディヴァリウスを弾く黒沢さん。見た目の通り、とても人懐っこい気さくな方です。

ストラディバリウス 1725

前面から見たストラディヴァリウス。左下が顎を当てる所です。右下に染みの様になっているのは、昔の人の使った痕跡です。昔は、今とは逆にヴァイオリンを構えていたのですね。そのあとが残っているわけです。ヴァイオリンの中央部は黒くなっています。ストラディヴァリウスに有名な「黒いニス」がこれなんだそうです。

ストラディバリウス 1725

背面はとても奇麗な木目が見えます。

ストラディバリウス 1725

ストラディヴァリウスを収納するケース。右手にヴァイオリン。左手に弓が二本入っています。この弓も「弓のストラディヴァリ」と呼ばれるトルテ。見ているだけで、足が震えちゃいます。

ストラディバリウス 1725

ヴァイオリンの中にはラベルが貼ってあって、(おそらく) イタリア語で文章が書かれています。f 字孔から覗き込んで、ようやく見える程度。意味はチンプンカンプンですが、重要なキーワードは分かります。それが上の写真に撮ったフレーズ (見えない方は、写真をクリックして下さい。大きな写真が表示されます)。「Clemona 1725」。クレモナはイタリアの都市で、ストラディヴァリを始めとしてアマティヴァルネリなどの名弦楽器製作者が 18 世紀に集まった町です。つまり、このストラディヴァリウスがクレモナの地で 1725 年に作られた、と書いてあるわけですね。

演奏と黒沢さん

楽器を取り出して、さあ本番。というわけには行きません。ヴァイオリンにも慣らし運転が必要なのです。調弦を行ない、演奏場所を探す黒沢さん。ヴァイオリンを鳴らして、曰く「この壁は鉄が入ってますね」。場所を移動してまたヴァイオリンを弾き、曰く「とても固い壁ですね」。曰く「薄い壁のお家だと反響がねぇ〜」。曰く「楽器も温まらないと音が良く出ないんですよ」。周囲に驚きを振りまきながら、どうやら演奏場所が決まったようです。

軽めに流れるメロディーは、サラサーテのツィゴイネルワイゼン。

ワッ。

この曲はオーケストラがバックに付く曲で、時おりオーケストラの代わりにピアノが伴奏を務めます。しかし、ソロで弾くのを聞くのは初めてです。ええ、もちろんヴァイオリン・ソロ用に適当に曲をはしょってます。演奏部分も曲の前半の穏かな部分です。しかし、いきなりツィゴイネルワイゼンを持って来るとは思いませんでした。

即興風に曲は流れて、エルガーの愛の挨拶、グノーのアヴェ・マリア、etc.

調子が上がって来たところで、ツィゴイネルワイゼンの後半部分。一番盛り上がる所を、ヴァイオリン・ソロで。真近に見るストラディヴァリウス。ツィゴイネルワイゼン。ピッツィカートは弓を持つ右手だけではなく、左手でも行なっています。「初めて知りました。左手でもピッツィカートするんですね!」。すると、ちょこっと解説した後に件のメロディーをアンコール。黒沢さん、気さく過ぎます。カッコイイ!

そろそろ本番に行きましょうか。声が上がって、譜面台登場。

正直、ちょっとびびってました。といのも、クラシックのヴァイオリン・ソロ曲って少ないからです。有名なのはバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ、G 線上のアリア、パガニーニのカプリースくらいでしょうか? それ以外となると、急にマイナーになります。ビーバーのロザリオ・ソナタ終曲「パッサカリア」とか、テレマンの無伴奏ヴァイオリンのための 12 の幻想曲とか、イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとか。ぶっちゃけ知らない... ^^;

でも、そこは手なれた黒沢さん。有名曲を一撫でした後、知らない曲を披露。皆が何の曲だろう、と ? を飛ばしていると、「今のは即興の曲です」。安堵が広がって、緊張もほぐれた所でポピュラーな曲を次から次へと。中には「高橋秀樹が登場したサスペンスで好きな曲が...」と。後で聞いたら、ビデオに撮って何度も聞き直し譜面起こしをしたそうな。ミスター・ロンリーやテネシー・ワルツ。果ては救急車のサイレンまで。

一曲だけビデオを撮れたので、YouTube にアップしてみました。ボビー・ヴィントンのミスター・ロンリーです。ちょっと頭が切れているのは、私の用意が待に合わなかったせい。ごめんなさい。

私はほんの 1〜2 m ほどの近距離で聴いたのですが、この距離で聞くと弓が弦を擦る音が聞こえるのですね。びっくり。古い SP 録音のノイズの様なサーという音でした。少し離れると聞こえなくなります。黒沢さんによると、ヴァイオリンを聞くには近すぎるとのこと。近いと直接音しか聞こえない。本当は、ホールの壁から返って来た間接音も一緒に聞く。すると、より響きが増すんだそうです。小ホール位いで 30 m 位い離れて聞くのが理想。確かに 1〜2 m といったら、下手するとオーケストラでは指揮者よりも近い位置になりますものね。ヴァイオリンの美味しい所を聞けていないのでしょう。でも、弓が弦を擦る音を聞くなんてのは楽器をやってない人間には未知の領域ですからね。とても良い経験ができました。

一通り弾き終えたら、「キラキラ星」を演奏。

で。

「皆さん、弾いてみませんか?」

いいんですか!?

こんなチャンスはまずないので、弾かせてもらいました。ストラディヴァリウスを!

手に持つヴァイオリンはとても軽く。胴を肩に乗せ。左手でネックを軽く支える感じ。右手にトルテの弓を摘む様に柔らかく持ちます。黒沢さんが、右手をコントロールして弓を引くと、あら不思議。私でもヴァイオリンを鳴らすことができました。ヴァイオリニストの視点も初体験。目の前で、弦の上を弓が左から右へ、右から左へと動きます。すると、「キラキラ星」のメロディーになるんですね。少し視線を先に伸ばすと、黒沢さんがネック付近の弦を押さえて音程をコントロールしています。開放弦で弾いてるんじゃないことを知りました。弓が弦にかかる角度、弓を引く力具合、左手の音程調整。ほとんどを黒沢さんにサポートしてもらってではありますが、ストラディヴァリウスを鳴らすことができました。曲を弾くことができました。感動ですねぇ。胸も震えますが、緊張で腕も震えます (^^)。

グリュミオーとミルシテインがお好き

演奏会は途中で一時中断。皆が持ち寄った菓子でティー・タイム。黒沢さんの面白い話を聞かせてもらいました。私が興味を持ったのは、黒沢さんがお好きというヴァイオリニスト。アルトゥール・グリュミオーとナタン・ミルシテイン。理由は二人ともストラディヴァリウスをトルテで弾いているから、だとか。

特にグリュミオーの美音は魅力ですよね。グリュミオーは 2 丁のストラディヴァリウスを所有していたそうです。1727 年製の「エクス=ジェネラル・デュポン」と製作年不詳の「タイタン」。

で、なお&トラちゃんは素晴らしいオーディオを持っているので... グリュミオーの演奏は聞けませんか? 黒沢さんから逆リクエスト。不幸にもグリュミオーの CD/LP はなかったんですけどね。残念。

グリュミオーじゃありませんけど、と前置きを置いて、オーディオ・ルームへ移動。オーディオで音楽を聴くの会。最初にかかったのはヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲。一聴。黒沢さんは「グァルネリの音ですね」。わ、分かる人には分かるんでねぇ。

ティー・タイム中にハイフェッツがストラディヴァリウスを持っていた話が出ていたので、合い間を見つけて質問。「何故、ハイフェッツはストラディヴァリウスを使わずにグァルネリを弾いたんですか?」。まあ、理由はハイフェッツ自身に聞かないと分からないわけですが... 黒沢さんの答えは、「楽器が人を選ぶ。ストラディヴァリウスは昔のイタリア人の身長 (今の日本人の平均と同じ位い?) 向け。グァルネリは大きな人向け。ハイフェッツは体が大きかったから、グァルネリが合ったんでしょう」。フムフム。勉強になります。付け加える様に、「ストラディヴァリウスもグァルネルも両方弾ける人もいる。アッカルドなんかがそう」。

気がつくとアッカルドの LP がかかっていました。

オーディオを聞いた後、黒沢さんのアンコールとストラディヴァリウスの写真会でイベントはお開きとなりました。

蛇足 1

蛇足 2

写真会の目玉はストラディヴァリウスの中にあるラベル。「Clemona 1725」の文字でした。細い隙間から一行だけピンポイントで撮影しようというのですから大変です。なお&トラちゃんは、本格的なデジカメを持ち出して来ました。でも、上手くピントが合わない。明かりが足りない。別の文字を撮ってしまう。しぶしぶ敗北。。。

私も iPhone4 を持って撮影にチャレンジ。1 回? 2 回? で成功。それが上の写真です。皆さんからも、上手く撮れたねぇ、とお言葉を頂きました。

これがなお&トラちゃんの心に火を点けた。フラッシュでは埒が明かないと小型の電灯を持って来て、ヴァイオリンを持っていてはブレると椅子にそっとストラディヴァリウスを横たえ、ライトの位置とヴァイオリンの角度を何度も変えて、ピントがずれて別の場所を撮ってもめげずにリピート、リピート、リピート。さながら、初孫を親族が見守る様相を呈して、ついに撮影に成功。カメラの実力は iPhone なんかに負けないぞ。高画質な「Clemona 1725」の文字はなお&トラちゃんのブログで見ることができます。

撮影成功後、黒沢さんがサラリ。「私は動画を撮って、いい画を切り出しちゃいます」。

あ〜〜〜

ええと。黒沢誠登さん。素晴らしい演奏をありがとうございます!!

2012-03-09

あだしもの (山本久美子) 連載始まる

先のエントリーに書いた通り、ジャンプ SQ 2012/04 号より山本久美子さんの初連載「あだしもの」がスタートしました。巻頭カラーでスタート。おめでとうございます。

ジャンプ SQ. (スクエア) 2012年 04月号 [雑誌]

山本久美子さんの作品は、当ブログで何度も取り上げているので説明は不要でしょうかね。詳しいことは過去記事をお読み下さい。というのも味気ないので簡単に。

山本久美子さんは今までに三本の読み切りを発表している新人さんです。絵がとても綺麗で、ストーリーは幻想的。ジャンプ SQ Comic Selection No.2 の著者のメッセージによると 大好きな妖怪を題材に描いた とのこと。過去の作品にはいずれも妖怪・魔物が登場しています。

妖怪ものと言うと、「ゲゲゲの鬼太郎」「うしおととら」などのアクションものから、「夏目友人帳」のようなハートフルな作品まで幅広いジャンルですが、山本さんの作品はどちらかというと後者。更に言えば、妖怪との交流を描くのではなく、妖怪の世界観を大事にした上で人と人との繋がりをとても大切に取り上げるタイプです。

あだしもの

さて、「あだしもの」ってなんでしょう。作中にヒントがあります。

これが (あやかし)の世界 "化野 (あだしの)"

人間世界の真横にある隠れた世界よ

どうやら「あだしもの」は「あだしの」に棲む妖を指すようです。

せっかくなので「化」を辞書をひいてみます。まずは漢字源。音読みは「カ」「ケ」、訓読みは「ける」「かす」。難読語に「化野」があります。フム、これではよく分かりません。もう一つ。漢検漢字辞典をひいてみます。音読みは「カ」「ケ」、訓読みに「ける」「かす」、表外訓に「わる」「える」があります。どうやら標準的な読みに「あだし」という使い方はないようです。しかし、「化野」を「あだしの」と読む項目がちゃんとありました (「化野」は「徒野・仇野」とも書くそうです)。引用してみます:

  1. 京都市の小倉山のふもとにある野。平安時代に、火葬場があった。
  2. 火葬場・墓場

Google でも検索してみましょう。「化野」で検索すると、京都にあるお寺・化野念仏寺 (あだしのねんぶつじ)や日本の妖怪研究家・化野燐 (あだしの りん)がヒットします。人名・地名で「化」を「あだし」と読むようですね。

少し「あだし」に関する無駄口が長くなりました。ストーリーの話をしましょう。

主人公・灰塚は高校一年生。怪異に関わり、自分の居場所を失なっています。そこへ、小町という同級生が「怪現部 (怪奇現象調査部)」に入らないか? と誘いをかけてきます。彼女も怪異に関わった一人で、怪現部はそういった者達が集まる「居場所」なのでした。おりしも、灰塚の周りでは物が壊れる現象が頻発。事件調査の中で、主人公は自分の居場所を見つける... というのが第一話。

掴みは上々。灰塚くんに取りついた怪異・小町さんは何故怪異と関わったのか・怪現部の他のメンバーは? 伏線もさり気なく張りながら、一話完結で主人公が「居場所」を見つけるストーリーは心のスッとするものでした。短編の名手 (?) たる山本さんの実力が十全に発揮された第一話です。

これから、第二話・第三話と話が続いていくわけですが、この物語がどういう風に推移していくのか? 期待と不安でドキドキです。

2012-03-02

ドラゴン・タトゥーの女を観る

昨日は映画の日でしたね。せっかくなので、最近面白いと評判の「ドラゴン・タトゥーの女」を観てきました。

ストーリー

偽情報を掴まされて信用をなくした雑誌記者。彼の許へ、スウェーデンの大会社の会長から評伝を書いて欲しいとの依頼が来ます。報酬は、彼の信用を失墜させた相手の「本当のスキャンダル」。そして、依頼内容の本当の目的は、40 年以上前に一族の誰かによって殺害された少女・ハリエットの真相解明。

「ドラゴン・タトゥーの女」は、この真相解明に「主人公」を選ぶために身許調査をした女性ハッカー。主人公は彼女をアシスタントに迎え、真相へと迫ります。

感想

二つの軸がこの映画の魅力でした。一つは、23 歳になりながらも後見人を持たなければならないほどに性格がゆがんでしまった「ドラゴン・タトゥーの女」の再生と別れの物語。もう一つは犯人に辿り着くまでの、緻密にして着実な捜査の歩み。

「ドラゴン・タトゥーの女」は、12 歳で父親に火をつけてからというもの、精神病院に入れられたり、麻薬をやったり、暴力をふるったりと、一言で言えば社会不適格者。しかし、一方で超一流のハッカーにして調査員。主人公と捜査を進めるうちに、「ようやく友達が一人できた」と言えるまでになります。この一人の女性の再生の物語が胸を打ちました。

ハリエット殺害の捜査は、足を使った実直な進め方。一枚の写真が気になる。その写真を掲載した新聞に出かける。掲載されなかった写真を見せてもらう。ハリエットが何かに驚く動きを、連続写真の中から導く。パレードの中、何を見て驚いたのか? 当時、同じパレードで写真を撮っていた人物を探し出す。写真を見せてもらう。こういう足を使った捜査を並行して進めてゆくのですね。ミステリー・ファンとしては、この一歩一歩の歩みが面白味を感じるところでした。

映画評を読むと、この映画には原作があるとのこと。「ミレニアム」シリーズの第一作が本作にあたるそうです。ミレニアム・シリーズは全三作。うち第二作までが日本で翻訳・発売済全三巻、既に文庫本で発売中でした。全三巻が揃ったら読んでみようかな?

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫) ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

2012-03-01

楽天ブックスでクロスxレガリアを注文した人はメール・チェックすべし

レンタル・マギカ・シリーズで有名な三田誠氏の新シリーズ「クロスxレガリア」。昨日が発売日です。

クロス×レガリア 吸血姫の護りかた (角川スニーカー文庫)
三田 誠 ゆーげん

4041001455
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-02-29
Amazonで詳しく見る
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さて、この本を楽天ブックスで予約なさった方の中で、まだ本が届いていない人はいませんか? 私もその一人です。原因は昨日の積雪? そういう地域もあるかもしれませんが、ちょっとメールをチェックすることをお勧めします。

【要返信】【楽天ブックス】価格変更のご案内

こんなタイトルのメールが届いていませんか?

予約後、クロスxレガリアは価格が変更になりました。旧価格は 560 円。新価格は 600 円。この価格変更に対して、発送を希望するかキャンセルするか? の問い合わせメールです。発送を希望する場合は、このメールに直接返信。本文を「発送を希望します」と書くだけです。

「楽天はスパム、スパムは楽天」と揶揄されるほどにメールが多い楽天。つい、見すごしていた人もいらっしゃるのではないでしょうか?

このメールの返信期限は 3/6 とになっております。返信しない場合は、キャンセル扱いとなります。あぶない。あぶない。

というわけで、楽天ブックスでクロスxレガリアを注文した人は、一度メールをチェックしてみて下さい。

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