2013-01-28

せどり男爵数奇譚 (梶山季之) 〜 日本の古書ミステリーのはしり

昨日、古書ミステリーとして「ビブリア古書堂の事件手帖」を紹介しました。

このビブリア古書堂シリーズに遡ること 40 年弱。日本で最初の古書ミステリーとされるのが、梶山 季之 (かじやま としゆき) (1935-1975) の短編集「せどり男爵数奇譚」です。オール讀物の 1974 年 1 月号から 6 月号まで連載され、同年一冊の本として出版されました。作者の死の前年の作品となります。

「せどり男爵」の話はビブリア古書堂シリーズでも出て来るので、こちらを先に読んでビブリア古書堂を読むも良し、ビブリア古書堂を読んで本書を読むもまた楽しです。

物語は、作家たる「私」がせどり男爵こと笠井菊哉に出会うことから知る「古書の世界」です。これが、本に狂った人間ばかり出て来てビブリオ・マニアにはたまらんのでしょうな。

短編の題名も一ひねりしてあって、全てに麻雀の役の名前が入っています。そして、物語もその役にからめた様な筋書きになっているんですね。ここに、短編のタイトルを挙げておきましょう。

  1. 色模様一気通貫
  2. 半狂乱三色同順
  3. 春朧夜嶺上開花
  4. 桜満開十三不塔
  5. 五月暗九連宝燈
  6. 水無月十三么九

いずれも、下四文字が麻雀の上がり役です。大雑把に役の説明をします (加しくは麻雀の解説をお読み下さい)。「一気通貫」は同じ種類の数牌を 1 〜 9 まで揃える役。「三色同順」は同じ数の並び (1・2・3 など) を萬子・索子・筒子で揃える役。「嶺上開花」はカン (同じ牌を四つ集めること) した時に引く嶺上牌でアがる役。「十三不塔」は一順目で 14 牌中 13 牌が完全にバラバラな状態でかつ 1 種だけ 2 枚重なっている役 (ローカル役で採用されないことが多いようです)。「九連宝燈」は「アがった者は死ぬ」と言われるほど難しい役で、同種の数牌を「1・1・1・2・3・4・5・6・7・8・9・9・9」と集め、あと一枚同種の数牌を加えて完成する。「十三么九」は今では「国士無双」という役名で知られており、数牌の 1・9 及び字牌各一種 (白・発・中・東・南・西・北) を集め、あと一枚数牌の 1・9 か字牌を揃える役。

役からストーリーを予測するも良し。読み終えてから、タイトルを見直して納得するも良し。なかなか凝った作品です。40 年前のレトロな雰囲気とともに楽しめる一冊。

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)
せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)

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