「オーデュボンの祈り」。サスペンスな一冊ということで、友達が貸してくれました。「ミステリーな一冊」と言わず、「サスペンスな一冊」というあたりが、この作品の徴妙な立ち位置を現しているように思います。
(ココからネタバレあり)
スジを一言で言えば至って簡単。「未来が見えるカカシが何故殺されたのか?」
まずは、カカシが喋ります。ええ、あのカカシです。オズの魔法使いの中に登場するカカシと同じものです。ただし、こちらのカカシは、話すことは出来ても歩けません。田んぼの真ん中に突っ立っているだけ。でも、喋ります。
そして、このカカシは未来が見えます。ちょっとした予言師です。遠くの未来は分からないけど、一、二週間先のことなら、ほぼ分かると言います (でも、あまり人に未来を教えてくれることはないようです)。
そんなカカシが殺されます (壊されます)。
「未来が見えるのに、何故、自分の死が見えなかったのか?」「何故、自分の死を回避できなかったのか?」
これが、この本のミステリー。
カカシが喋るあたりファンタジーです。でも、「カカシは予知が出来て喋る」というルール以外、本書はこの世の理 (ことわり) を逸脱しません。そういう意味では、この本は SF ミステリーに非常に近い作品です。読んでいて、アシモフの「鋼鉄都市」を読んでいる既視感に襲われました。
もちろん、ミステリーとしても十分楽しめます。そして、プロット・筋運びも一流です (この作品が処女作とは思えない!)。読後感も十分。当たりな一冊でした。
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