「初心者向けクラシック音楽」プレイリストの「ヴィヴァルディの四季より春 (第 1 楽章)」の説明です。
作曲家と時代
作曲者アントニオ・ヴィヴァルディはイタリアの作曲者です。イタリア生まれとざっくり言っていますが、当時のイタリアは複数の国があり、ヴィヴァルディはヴェネツィア共和国の生まれとなります。1678 年生まれ、1741 年没。バロック時代の作曲家で、パッヘルベル (1653 年生) より若く、バッハ (1685 年生) より少し年上です。
ヴィヴァルディは「赤毛の司祭」という呼称でも知られている通り、カトリック教会の司祭でした。この時代は教会の力が強く、作曲者が教会の聖職者であることも珍しくありませんでした。バロック音楽が終わると、王侯・貴族の力が強くなってゆきます。
曲
ヴィヴァルディの「四季」は 4 つのヴァイオリン協奏曲「春」「夏」「秋」「冬」から成ります。ここでは、「四季」から最初の協奏曲「春」の第一楽章を選びました。
一般には「四季」でワンセットに扱れがちですが、実は、この 4 つの協奏曲は「和声と創意の試み 作品 8」という曲集に収録されています。「和声と創意の試み」には 12 曲のヴァイオリン協奏曲が収められており、その 1 曲目から 4 曲目が「四季」として総称されています。
「和声と創意の試み」には、第1番「春」、第2番「夏」、第3番「秋」、第4番「冬」の他にタイトルを持っている作品があるので少し見てみましょう。第5番「海の嵐」、第6番「喜び」、第10番「狩り」。5番以降は「四季」とは全く関係のないタイトルが付いています。ちょっと拍子抜けしてしまいますね。もしタイトルがシャレていたら、「四季」同様に世に知られることになっていたかもしれないと思うと、不思議な感じがします。
もし興味を持ったら、「和声と創意の試み」全曲も聴いてみると面白いでしょう。
演奏者と演奏
ヴィヴァルディの「四季」は 20 世紀初当、それほどポピュラーな曲ではなかったと言われています。曲を有名にするきっかけは、名演の存在、といっては大袈裟でしょうか。
1951 年、カール・ミュンヒンガーがシュトゥットガルト室内管弦楽団を指揮して「四季」の録音を行ないました。ヴァイオリン独奏者はラインホルト・バルヒェット。この演奏で「四季」人気の先鞭となりました。その後、イタリアのイ・ムジチ合奏団が 1955 年に「四季」を録音。指揮・ヴァイオリン独奏はフェリックス・アーヨ。
さて、1950 年代前半の録音について。当時はモノラル録音が主流。モノラル録音とは左右のスピーカーで同じ音が流れる方式です。しかし、1950 年代後半になるとステレオ録音が始まります。ステレオ録音は複数のマイクを使って録音し、スピーカーの右と左で別々の音を鳴らします。ステレオ録音の良いところは、音が立体的に聞こえることです。オーケストラであれば、ヴァイオリンは左で、コントラバスは右で演奏されているのが分かります。。合唱曲ならオーケストラが前に居て、合唱団が後ろに居るのが分かります。教会などの天丼の高い所で演奏していれば、音が高く昇っていく様子を感じることができます。ステレオ録音はその音の立体性から一気に広まりました。
この録音界の動きを受けて、演奏者もステレオ録音で「再録音」を開始します。ミュンヒンガーは 1958 年に再録音を (ヴァイオリニストはコンスタンティ・クルカに変更)、イ・ムジチは 1959 年に再録音を行ないました。
今日では、特に、歴史的な意味と演奏の良さからミュンヒンガーとイ・ムジチの 2 回目の録音に評価が高いです。
今回のプレイリストでは、そのイ・ムジチの 2 回目の録音から「春」の第一楽章を選びました。