Musical Baton レビューも最後の一回となりました。最後に紹介するのは、Irish Trad (アイルランドの伝統曲) Siúil A Rúin (シューリ・ルゥ) です。
この曲は別名 Johnny Has Gone For A Soldier (ジョニーは戦争へ行った) という曲名でも知られ、Peter, Paul & Mary の 1963 年のヒット曲「Gone The Rainbow (虹と共に消えた恋)」の原曲としても有名です。
Siúil A Rúin について
Siúil A Rúin について素人なりに調べたことを書いてみます。
この曲は、兵士として戦場に出た恋人を待つ女性の歌です。ここで言う「戦場」の説明をするには、アイルランドの歴史がほんの少し必要です。
1603 年、アイルランドは最後の砦アルスターがイングランドに陥落し、イングランドの植民地となります。宗教改命まっただ中の 17 世紀。ボイン川の戦い (1690) とオーグリムの戦い (1691) で決着がつくまでの間、カトリック系のアイルランドはイングランドのプロテスタントと対立し続けます。この戦いで活躍したアイルランド将兵が敗戦後、フランスなどに渡り「ワイルド・ギース」として知られるようになります。Siúil A Rúin で歌われる恋人は、この「ワイルド・ギース」として海を渡った傭兵のようです。
本来、ゲール語で歌われていたであろうこの曲は、(メイフラワー号と一緒に?) アメリカに渡り独立戦争 (1775-1783) で歌われたそうです。そのため、この曲は英語とゲール語が入り混じるという、一風変わった曲になりました (独立戦争ではなく南北戦争でアメリカにこの曲が渡ったと書いてある本もありました)。
Siúil A Rúin の表記については、Suil A Ruin, Siúil A Rún, Shule Aroon, といったものも見かけますが、どれが正しいのか私には分かりません。探せば、もっと色々な表記があると思います。
Siúil A Rúin の CD
Siúil A Rúin を初めて聴いたのは「The Civil War」というサントラの中でした。これは 1990 年頃の同名海外ドキュメンタリー (未見) のサントラ盤で、南北戦争当時の音楽 (Battle Cry of Freedom や Battle Hymn of the Republic) などが収録されています。私は D. D. Emmett の「Dixie」という曲を求めてこの CD を買ったのですが、ピアノとリコーダーだけで演奏される「Johnny Has Gone For A Soldier」を聴き、心を奪われてしまいました。とても悲しげで、ゆっくりしっとり語りかけるような演奏は秀逸です。しかし、ブックレットには old Irish folksong
とだけしか情報がありませんでした。折りしもアイリッシュ音楽がブームだったこともあり、その手の本を探しまくって、原曲名が Siúil A Rúin であることを突きとめました。
手持ちの CD は以下の通りです。この中では、特に PPM と Solas の演奏がお気に入り。
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とにかく試聴してみて!
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