チェロの名手ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ (1927-2007) によるバッハの無伴奏チェロ・ソナタを聴いています。ロストロポーヴィッチの無伴奏チェロにはいささかの思い出があります。
あれは何年前のことでしょうか? バッハの無伴奏チェロ・ソナタ第一番が一部のマニアの間で人気になったことがありました。きっかけは、新世紀エヴァンゲリオンの劇場版「Death & Rebirth」にて、この曲が使われたことにあります。当時も、私と友人はエヴァにハマリきっておりました。そして、バッハの無伴奏チェロ・ソナタの全集が欲しいねぇ、と言って HMV に足を進めたのです。
当時学生の私達。お値段はリーズナブル。それでいて名演を求めました。そこで候補に残ったのが、ヨーヨー・マとロストロポーヴィチ。まずはヨーヨー・マの演奏を試聴してみます。ゆったりとしていて、良い演奏でした。流石に上手い、の一言。有名な演奏者 (CM でも名前の露出が激しかった) だし、これは決まりかな? と思ってロストロポーヴィッチの無伴奏を聞いてみます。第一楽章からキレ味のするどい演奏。ヨーヨー・マと次元が違う! 鳥肌を立てて、ロストロポーヴィッチ盤をレジに運びました。
あれから十数年。ロストロポーヴィッチ氏は 2007 年に亡くなってしまいました。手元には、彼の EMI 時代の全録音ボックスがあります。28 枚組ながら 11,415 円。もちろん、バッハの無伴奏チェロ・ソナタも収録されています。
彼の無伴奏チェロを聴いて、切れ味のするどくホリの深い演奏を楽しみながら、エヴァを思い HMV の店の中で初めて聞いた感動をつい思い出してしまいます。